許容変動幅拡大…懸念される日銀YCC政策の「帰着点」
「勝って終わるか」・「負けて終わるか」…YCC2つのシナリオ
日本経済ウォッチャーにおいて共有されている最大の懸念は、世界で唯一長期金利をコントロールしている日銀の超金融緩和政策YCCの帰趨である。YCCの終わり方に勝って終わるか負けて終わるかの2通りがある。
勝って終わるとは、日銀が所期の目的であるデフレ脱却と2%インフレの定着を実現した後、YCCを終える道であり、それは株高を伴う望ましい終焉である。
負けて終わるとは、デフレ脱却を果せずにYCCを終える道であり、長期金利の急騰、債券暴落、景気悪化と株安が同時に起きるので、景気後退のみならず金融危機を引き起こすかもしれない。それは日本が世界最大のクロスボーダーの貸し手であり、世界金利のアンカーである故に、容易に世界金融危機につながるかもしれない。
カギは円暴落があり得るかどうか、にかかっている。ジョージ・ソロス氏のポンド売り投機に襲われた1992年の英国は、為替を取る(=EMS欧州通貨制度加盟維持)か、国内景気優先の金融緩和維持を取るかの二律背反(ジレンマ)状況にあった。
いまの日本に当時の英国同様の弱みを嗅ぎ取った海外ヘッジファンドが、時折日本売りのチャレンジを試している。そのチャレンジが成功するかどうかは、日本政府・日銀の許容限度を超える円暴落が起きるかどうか次第であろう。
ドル安は100兆円レベルの巨大な利益を日本にもたらす
筆者は、タガを外れたような円の暴落はまったく考えられないし、日本に円安を止めなければならない理由もない、と判断している。
日本は世界最大のドル保有国なので、ドル高は日本の保有外貨資産の価値を大きく押し上げる。対外純資産は3.6兆ドルと世界最大、米国国債保有額も1.2兆ドルと世界最大であり、ドル高は100兆円規模の巨額の為替換算益をもたらす。それを利用することで企業投資、政府によるハイテク・グリーン投資、防衛支出の増強などの費用が賄える。
また企業の価格競争力は飛躍的に強まる。円安が進めば輸入物価が上昇するというマイナスはあるが、それは工場の国内回帰と国内製品の輸入代替を進めるので国内生産はより増加する。
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