長期金利抑制=「潜在的デフレリスク」
6%のコアCPIの下で3%台に長期金利が抑制されているということは、潜在的な貯蓄余剰=デフレリスクの存在、を示唆する。このことにより、いつでも金融緩和という手段を使える。イエレン財務長官が主張する高圧経済状態を維持するという戦略が生かされるのではないか。
比較的タイトな労働需給が続き労働者の強いバーゲニングパワーが維持されることで、企業には労働生産性向上のインセンティブが与えられ、それはサプライサイドも強化する。その場合インフレ率3%へとターゲットをシフトさせる可能性もあり、FRBの市場フレンドリーという傾向は変わることはないだろう。
となると2022~2023年はリセッションの年ではなく、長期経済拡大のなかで3~4年ごとに訪れた2013年、2016年のような、ミニディップの年になるかもしれない。利上げ一巡、利下げが視野に入る2023年中には米国株式は騰勢に転ずる可能性が高い。
米国経済の司令塔たちが抱く「経済思想」の推測
筆者は米当局はオーバーキル回避に軸足をシフトしていくと考える。なぜなら現在の米国の最大のリスクがいいインフレを殺すことであり、高圧経済論者イエレン氏をはじめ、米国のリーダーはそれを強く意識している、と思われるからである。
米国の根本リスクは企業の好調な利潤が経済成長につながらず、金融市場で滞留して低金利を引き起こしていること。この低金利は短期的にはいいことだが、それが行き過ぎるとデフレ、大不況を引き起こす。
それを回避するためには、健全な賃上げ、労働分配率引き上げにより企業の過剰利益を抑制し、他方で賃金上昇により消費が喚起されることが必要である。
このところの米国長期金利の低下によって、コロナ後のインフレと金融引き締めにもかかわらず、米国および先進国経済の以下の基本矛盾、
という不等式が変わっていないことがほぼ明らかになった。この基本認識が、「インフレはいいことだ」との認識をもたらしている、と考える。パウエル議長がインフレを一時的(transitory)と評して看過し続けたのは、そうした基礎認識があったからであり、大枠として間違っていない、と考える。
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