2023年最大リスクは「中国」
排除できない台湾有事
2023年の最大のリスクは依然地政学であろう。ウクライナ戦争に関しては、ロシアの敗色が濃厚になるか、膠着状態が強まるかであり世界経済への悪影響は限定的であろう。しかし極東においては、中国による台湾有事の可能性が高まっている。
中国経済の減速は顕著にみられる
中国経済は一段と減速、不動産バブルの崩壊は当局の弥縫策を伴い、緩慢ではあるが広範化しつつ進行している。
日本の過去になぞらえれば、不動産不祥事が顕在化しつつも金融不良債権の実態が見えていなかった1994~5年の様相を呈している。山一証券破たんから始まる金融危機の数年前に相当する。
11月の貿易急減も衝撃的である。前年比で輸出-8.7%、輸入-10.6%という中国貿易の落ち込みは、日本(11月の輸出+20.0%、輸入+30.3%)、米国(10月の輸出+11.7%、輸入13.0%)と好対照であり、変調をうかがわせる。コロナ・ロックダウン下とはいえ11月消費も-5.9%と前年水準を大きく下回っている。
経済不安に直面した専制的支配者は、対外強硬路線で求心力を図ることが多い。経済困難、長期見通しの悪化が見えているので、経済力がピークにあるいまのうちにアクションを取るべきだとの仮説も成り立つ。
「旧体制と大革命」が示唆する習体制の末路
コロナ・ロックダウンに対する抗議運動の自然発生的勃発と広がりは、監視国家による統治能力の限界を垣間見せた。人々が職にあぶれパンが得られなくなって流民化すれば、強権・監視は威力を失う。パンを求める貧民は、専制政府のセンサーシップ、監視国家を恐れない民衆と化す。
中央集権と独裁権限の強化は、ガス抜きや不満の受け皿を壊してしまっているかもしれない。慌てた習政権はロックダウンの緩和へと、抗議運動に譲歩したが、それは(いったんは抑え込まれるにしても)抗議活動に一定の自信を与えるかもしれない。
フランスの歴史・思想家A・トクビルは「旧体制と大革命」において、革命の原因として、
①旧体制下の中央集権化と不満吸収装置の喪失
②ルイ16世の民衆に対する憐憫が逆効果を生んだこと
を指摘していると評されているが、習近平体制もそうした過程に入り込みつつあるかもしれない。
武者 陵司
株式会社武者リサーチ
代表
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