2.「やってよいこと」を増やしていく
「未経験者はなにもできない」とか「育成してからでないとなにもさせられない」といった認識がいたずらに新人のデビューを遅らせていきます。上記の明確な基準を設定し、それをクリアした人には、その基準の人ができることを「やってもいい」という権限を与える必要があります。基準をクリアすることでできる業務が増えていき、組織の役に立てる存在であることを認識できれば、新入社員は成長や存在意義を実感することができます。
また、組織としても育成中から役に立ってもらうことができるということです。具体的な運用例としては、「未経験者であっても教えれば誰でもできること」を最初に教えてテストをし、合格させます。掃除、片付け、基本的なキットの準備、在庫の数量確認などのテストを早々にクリアすれば、それはルールどおりに規定のスピードで実施することができるわけですから、合格の翌日からほかのスタッフよりも多くその業務をさせることで、できることが増えていく実感を得させるのです。
これで、ほかのスタッフの負担を軽減することも可能となります。未経験者でもまったくの新人でも、できることはあるのです。
3.育成の仕組みを更新させる
いったん作った育成の仕組みが形骸化してしまう原因として、「不明確であること」「できることが増えていかずに育成する側に負担がかかること」があります。そして、「いまやっていることと違う」のも大きな理由です。育成の仕組みは、当初リーダークラスが作成し、「これはよいものができた」と実運用に入っていくでしょう。
その際に起こる問題は、リーダーが作成した育成の仕組みが、新人たちからすると、前提となる知識を持っていないために理解が追い付かないものになってしまっているということです。この問題を解消するためには、育成されている側の新人たちがわからない部分を調べたり聞いたりして補填していき、書き加えていく必要があります。
先にマニュアル作成を合格基準に設定することが多いのはそのためです。毎年、育成を受けた人が、自分たちが詰まったところや前と変わっているところを反映して聞わかっていない人のためにマニュアルを作って提出すれば、1年に1回はマニュアルが更新されることになるからです。明確な基準を作ることは、この更新にも有効なのです。
そもそも、育成の仕組みはわかっていない人がわかった状態になるための仕組みである必要があります。仕組みの運用はリーダーが行いますが、教材やマニュアルはわかっていない人がわかるように作成されるべきです。