依然、大卒人材は「売り手市場」で競争過熱
有効求人倍率の変化を見てみましょう。有効求人倍率とは、求職者1人に対して何件の求人があるかを示したものです。これが高ければ高いほど、求職者=売り手にとって優位な状態──いわゆる、売り手市場ということになります。
大卒の求人倍率を見ても、新型コロナウイルスの影響で一時的に低下したものの、1.5倍と底堅く、求人総数が民間就職希望者数を上回る「売り手市場」が継続しています。就職希望者が45万人に対して、求人数が67.5万人分もあるわけです。
これを従業員規模別でさらに見ていくと、中小企業──それも従業員300人未満の求人倍率は、2年前が9.91倍だったのに対して、新型コロナウイルスの影響で2021年卒では一時的に3.4倍になりました。
これはコロナ禍においては、企業側の“雇い控え”によって、そもそもの求人数が下がっていることも挙げられますが、加えて、従業員1000人未満の中小企業を希望する学生の数が前年比で44.7%増加したことも挙げられます。
この背景には、鉄道業界や航空業界、ホテル業、デパートなどの大手企業の業績が軒並み悪化し、採用を控えるところも多く、学生の意識の中でも、これまでの「大手であれば大丈夫」という“安全神話”が崩れたことがありました。
しかし、2022年卒採用では従業員1000人未満の中小企業の求人倍率は5.2倍と上昇傾向になり、従業員1000人以上の大企業では、1.0倍を切り低下しました。これは、大企業が採用人数を持ち直したことと、コロナ禍によって不確実性要因が高まったため、学生が安全志向へと走り大企業を希望するようになった結果といえます。
採用予定数の増加以上に、大企業希望者数が増加したため、求人倍率が低下したのです。従業員規模5000人以上の大企業と、300人未満の中小企業の求人倍率の差は4.87ポイントとなり、前年の2.80ポイントから、一転して拡大しました。
従業員規模1000人未満の企業では、コロナ後の採用数の回復が遅れたため、学生側の希望は大企業へと流れ、求人倍率が上昇する結果となったのです。
求人倍率は景気の影響による企業の求人の積極性と、学生の就職に対する危機感によって決まっていきます。景気が悪く、大企業の採用が消極的なときほど、中小企業が優秀な人材を採用できる確率は高くなるといえます。