データから紐解く採用状況
中途、新卒採用の市場の変化を捉え、特に中小・ベンチャー企業がゴーイング・コンサーンを果たすために欠かせない、学生の考え方や行動の変化を紐解きます。さまざまなデータを引用しながら採用状況の変遷について考察していきますので、優秀な人材を獲得するためのこれからの採用戦略作りのヒントにしてください。
リーマンショックと新型コロナウイルス…それぞれの有効求人倍率
2008年にリーマンショックが起こったあとの有効求人倍率は、「0.5倍」前後まで落ち込みました(2009年)。「有効求人数」が少なく「有効求職者数」のほうが多い状況でした。
現在の状況はどうでしょうか。新型コロナウイルスによるパンデミックが起こる前の2019年の平均有効求人倍率は「1.60倍」と高水準でした。しかし新型コロナウイルスの感染拡大が続いた2020年9月には「1.03倍」と急下降しました。
とはいえ、リーマンショックのときのような、求人数よりも求職者数が多いという逆転現象にまではなりませんでした。その要因はいくつか考えられますが、新型コロナウイルスによる景気悪化に対処するため、世界各国が財政出動を行い、市場に大量の資金が流入したことも1つです。その額は、2020年末で、約14兆ドル(約1400兆円)にも達しています。
日本でもコロナ対策予算は200兆円にも上り、世界第2位の規模の財政出動が行われています。手厚い資金繰り支援策で、2020年の企業の倒産件数は7773件(東京商工リサーチ調査)と、過去50年間で4番目の低水準となりました。この時点でコロナ関連での倒産は792件でしたが、2021年8月末時点では2000件に迫り、2021年の総倒産件数は1万件を超えるとも予測されています。それでも、リーマンショックや30年前のバブル崩壊のときに比べると少ない数字です。
私も、中小企業の経営者ですので、この2020年から2021年のあいだでコロナ関連支援策の融資や助成金で数億円を調達することができ、事業継続のためだけでなく、未来に向けた投資を積極的に行うことができました。
2021年は新型コロナの感染拡大なども続き、日本のGDPは落ち込みましたが、日銀短観による大企業の景気判断は、製造業だけでなく非製造業でもプラスへと大きく回復しています。いまは新型コロナ感染が抑えられていることから経済活動再開が進み、中堅・中小企業も持ち直しつつあります。
2022年は、経済活動の正常化に伴い、雇用の回復も本格化するでしょう。状況は刻々と変化していきますが、いずれにせよ経営者は未来を見据え、事業を発展させられる人材を確保する努力を続けなければなりません。