「米ドル急落」が一服した背景
ところで、このポジション調整とは、「年末特有」と説明してきたように、基本的には年末までに一巡します。
ちなみに、CFTC(米商品先物取引委員会)統計の投機筋の円ポジションを見ると、2021年も11月以降米ドル買い・円売りの縮小が続きましたが、それはまさに年末で一巡、2022年に入ると米ドル買い・円売り再開となっていました(図表3参照)。
以上のように見ると、米ドル急落が先週一服となった背景には、11月以降の米ドル急落をもたらした大きな要因の可能性があったポジション調整の米ドル売りが峠を越えつつある影響は考えられるところでしょう。
対円だけでなく、非米ドル主要5通貨(日本円、ユーロ、英ポンド、スイスフラン、加ドル)で計算した米ドル・ポジションは、米ドル買い越しは先週にかけて大きく縮小し、ほとんどニュートラルに近くなりました(図表4参照)。
以上見てきたように、年末が近付くなかで、ポジション調整に伴う米ドル売りが峠を越えつつあるなら、今週は米CPI発表やFOMCといった注目イベントが相次ぐ予定となっていますが、米ドル下落は限られ、12月2日に記録したこの間の米ドル安値である133円台を割り込む可能性は低いのではないでしょうか。
ちなみに、13日発表予定の米11月CPIの対前年同月比上昇率は前回の7.7%から7.3%程度へ低下するとの予想になっています。ではこの結果に対して為替相場はどのような反応となるか。
9日に発表された米11月PPI(生産者物価指数)は、対前年同月比上昇率が前回の8%から7.4%へ比較的大きく低下しましたが、事前予想が7.1%程度へさらに大きく低下することを見込んでいたことから、むしろ発表直後は米ドル買いの反応となりました。その意味では、CPI発表後の反応は、事前予想の7.3%程度が基準になりそうです。
そして14日は年内最後のFOMC。ここでは利上げ幅がこれまでの0.75%から0.5%へ縮小が見込まれています。為替相場の反応としては、パウエル議長の記者会見や、FOMCメンバーの今後のFFレートの見通しなどが材料視されることになりそうです。
すでに述べたように、11月以降の米ドル急落をもたらした大きな要因だった可能性のあるポジション調整の米ドル売りが峠を越えつつあるなら、CPIやFOMCを受けてもこの間の米ドル安値である133円台を割り込む可能性は基本的には低いのではないでしょうか。
では逆に米ドルが一段の反発に向かう可能性はあるのか。テクニカルには、11月30日のパウエル発言をきっかけに米ドル下放れが起こる前までの保合い下限、137円半ばを大きく超えられるかが目安になりそうです。
以上を踏まえると、今週の米ドル/円は133~138円のレンジで想定したいと思います。
吉田 恒
マネックス証券
チーフ・FXコンサルタント兼マネックス・ユニバーシティFX学長
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