「12月6日~12月12日のFX投資戦略」のポイント
〈ポイント〉
・11月以降、それまでから一変、米ドル安・円高が急加速となった。この米ドル安・円高がいつまで続くかについて、
① ポジション調整の米ドル売りが年内で一巡するか
② 米ドルの短期的な「下がり過ぎ」拡大が130円までに一巡するか
以上2点に注目。
・12月の米ドル/円の予想レンジは130~137.5円を想定。
「ポジション調整の米ドル売り」はいつまで続くか
11月以降、米ドル/円の様相は一変しました。それまでの米ドル高・円安から米ドル安・円高へ大きく転換したわけです(図表1参照)。
ではこの米ドル安・円高はどこまで続くのか。結論的に言うと、とくに以下の2点に注目しています。
1つは、ポジション調整の米ドル売りは年内で一巡するか。そしてもう1つは、米ドルの短期的な「下がり過ぎ」拡大がどこで一服するか。
11月以降、米ドル安・円高に大きく動くきっかけとなったのは主に2つ。1つは11月10日の米10月CPI(消費者物価指数)発表で、140円台後半で推移していた米ドル/円はほんの数日で140円を割れるまで急落しました。そして2つ目のきっかけは11月30日のパウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長発言で、これを受けた米ドル/円は、139円台から12月2日には一時133円台までの急落となりました。
ところで、このように米ドル安・円高が急拡大したなかでの大きな特徴は、米金利とのかい離でした。10月まで記録的なペースで展開した米ドル高・円安は、インフレ対策の米利上げ、それに伴う米金利上昇とほぼ重なって推移しましたが、11月以降の米ドル安・円高は米金利から大きくかい離したものだったのです(図表2参照)。
では、米金利で説明できない米ドル急落をもたらしたのはなにか。それは、ポジション調整の米ドル売りの影響が大きかったのではないでしょうか。
例年、11月から年末にかけてはポジション調整が入る傾向があります。2022年の場合は、10月まで記録的ペースの米ドル高・円安が展開し、そのなかで米ドル買い・円売りは最も大きな利益を上げた取引のひとつと見られました。このため、米ドル買い・円売り取引が膨らんでいたと見られることから、そのポジション調整は米ドル売り・円買いになると考えられます。
このようなポジション調整の米ドル売り・円買いは、米ドル/円の上値を抑えるとともに、上述のように11月以降何度か米ドル安・円高が加速する局面では、少しでも高いところで米ドルを売ろうとして、米ドルを売り急ぐ動きがさらに米ドル安・円高を加速させた可能性があったのではないでしょうか。
以上のように考えると、米ドル安・円高の急拡大が一段落するひとつの鍵は、そんなポジション調整の米ドル売りがいつ一段落するかということでしょう。この点について、1年前のケースを参考に考えてみましょう。
ヘッジファンドの取引を反映するとされるCFTC(米商品先物取引委員会)統計の投機筋の円ポジションを見ると、2021年の米ドル買い・円売りは11月初めにピークを打って、年末にかけて縮小(図表3参照)。まさに、11月以降、米ドル買いのポジション調整が進んだ可能性を示していました。
ところで、そんな米ドル買い・円売りポジション縮小は年末で一巡し、年明け以降は再び拡大に向かいました。
2021年11月末に、パウエル議長は、「インフレは一時的とのこれまでの見解を撤回する」と発言、インフレ対策の利上げを進める、タカ派への傾斜を強めました。こういったなかで、越年前のポジション整理は、教科書通りに年末で一巡し、年明けからは米金利上昇を手掛かりとした米ドル買い再開になったと考えられます。
さて、CFTC統計の投機筋の円ポジションを見ると、2022年の場合も、米ドル買い・円売りは1年前とほぼ同じタイミング、10月末でピークを打って、その後は縮小する動きとなっています。
これを見ると、基本的には越年前のポジション整理の動きと考えられ、今のところ米利上げが年明け後も続く見通しとなっていることからすると、教科書通りならその動きは年内で一段落し、年明け以降は米金利上昇を手掛かりとした米ドル買いが再開する可能性があるでしょう。