(※写真はイメージです/PIXTA)

候補者に対する人物像の仮説もできあがっていない採用面接の冒頭で、自己PRについて聞く必要はないといいます。それはなぜでしょうか。人事コンサルタントの曽和利光氏が著書『人材の適切な見極めと獲得を成功させる 採用面接100の法則』(日本能率協会マネジメントセンター)で解説します。

「強み、弱み」は相対的なもの

■もともとあるのはその人の「特徴」だけ

 

採用面接で「あなたの強み、弱みを教えてください」と尋ねる質問は、実はあまりよい質問ではありません。理屈っぽい言い方で恐縮ですが、どんな仕事をするのかが決まってない状態では、人に本質的な「強み、弱み」などというものはなく、あるのは「特徴」だけだからです。

 

もちろん、何か特定の仕事や環境を前提とした際には、その特徴が強みになったり、弱みになったりするのはわかります。しかし、そういう前提なしに「あなたの強み、弱みは?」と聞かれても、候補者は困ってしまうのではないでしょうか。

 

例えば「知的好奇心が旺盛」と聞けば、それは“強み”ではないかと思う人が多いでしょう。しかし、私が以前勤めていた金融機関では、場合によっては「飽き性」と捉えられ、一つのことを長く深く続けられない“弱み”と見なされることがありました。

 

同じように、ストレスに強いのは「鈍感」なだけかもしれませんし、志が高いのも能力がついていかなければ「夢見がち」と空回りし、新しいことにチャレンジするものの日々の必要な雑事を軽視していては「凡事徹底しない」と思われるかもしれません。それだけ「強み、弱み」は相対的なものです。

 

逆に言えば、一般的に“弱み”とされる特徴であっても、“強み”に転じる可能性があるということです。極論ですが、私は「要らない人は一人もいない」と思っています。どんな人にもどこかに生きる道がある、どんな人も何かの強みを持っている天才なのです。何事も捉え方や解釈次第です。

 

同じことでもポジティブに言うか、ネガティブに言うかによって、まったく印象や評価が違ってきます。優柔不断を「慎重」と言えば、ポジティブな特徴にもなります。軽率は「フットワークがよい」、神経質は「感受性が豊か」、気が小さいは「注意深い」、大雑把は「おおらか」、融通がきかないは「まじめ」、頑固は「信念がある」、せっかちは「行動が早い」、気分屋は「感情表現が豊か」等々、いくらでも表現できます。

 

このように、一見すると“弱み”と思われそうなことでも、見方によっては“強み”になり得ることが、分かっていただけたのではないでしょうか。このように同じことの見方を変えることを「リフレーミング」(物事を見るフレームを変えること)と呼びます。

 

なかなか難しいとは思いますが、ここで挙げたような「ポジティブ言い換えワーク」などのリフレーミングなどをやってみると、候補者の意外な可能性に気づくことがあるかもしれません。

ポイント
•「強み、弱み」は相対的なもので、本来あるのはその人の「特徴」だけ。

 

 

次ページ面接で聞くべきは「客観的事実」

※本連載は、曽和利光氏の著書『採用面接100の法則』(日本能率協会マネジメントセンター)より一部を抜粋し、再編集したものです。

採用面接100の法則

採用面接100の法則

曽和 利光

日本能率協会マネジメントセンター

採用活動における「面接」は、最もポピュラーな採用選考の方法です。 しかし、これほど普及していながら、「人材をきちんと評価できているか?」「うまくコミュニケーションは取れているか?」「内定を出しても辞退されやすいの…

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