(※写真はイメージです/PIXTA)

候補者に対する人物像の仮説もできあがっていない採用面接の冒頭で、自己PRについて聞く必要はないといいます。それはなぜでしょうか。人事コンサルタントの曽和利光氏が著書『人材の適切な見極めと獲得を成功させる 採用面接100の法則』(日本能率協会マネジメントセンター)で解説します。

面接で聞くべきは「客観的事実」

■聞くべきは「自己PR」ではなく「客観的な事実」

 

面接の最初に「自己PRをお願いします」という質問は一般的ですが、実は「それほどよい質問ではない」と私は考えています。

 

「自己PR」や「自分が思う自分の強み・弱み」は、面接の最後の方で「その人の実際の姿と自己認知にズレがないか」を確認する意味では重要ですが、より重要なのは「客観的な事実」を聞くことであり、「その人が自分自身をどう思っているか、どう評価しているか」は二の次です。

 

よって、候補者に対する人物像の仮説もできあがっていない面接の冒頭で、自己PRについて聞く必要はありません。聞いてしまうと、面接担当者にバイアスがかかり、自己PRに引きずられて正しい評価ができなくなってしまうこともあります。

 

いわゆる「就活本」などでは、この「自己PR」の重要性がとくとくと説かれているケースが多くあります。

 

しかし、初対面の相手に対し「自己紹介してください」と言ったとき、「私は協調性のある人間で、多くの人に慕われています」と答えるのは対話として不自然です。

 

それよりは、「私はこういう環境で育ち、△△を学び、こういうことをやってきました」と、「事実」を答えてもらう方が自然ではないでしょうか。

 

それを聞いて最終的に評価をするのは面接担当者です。候補者本人による主観的な自己評価を聞く時間があるならば、その時間を客観的なエピソードを聞くことに回しましょう。

 

「私はアメリカに3年間留学していました」という事実情報は必要ですが、「だから私には国際性があり、私の英語力は御社にとって役に立つはずです」といった自己評価までは、語ってもらう必要がないのです。

 

「自己PR」を聞くことに時間を費やせば、一見まとまった話を聞けたように錯覚するものです。しかしこれは、回答に満足感が得やすいだけで、それほどよい面接のスタンスではないのです。

 

ポイント
•面接では自分の主観的な情報でしかない「自己PR」を重視する必要はない。
•聞くべきは「客観的事実」であり、その積み重ねによって、面接担当者は候補者を評価すべき。

 

曽和 利光

株式会社人材研究所 代表取締役社長

 

 

※本連載は、曽和利光氏の著書『採用面接100の法則』(日本能率協会マネジメントセンター)より一部を抜粋し、再編集したものです。

採用面接100の法則

採用面接100の法則

曽和 利光

日本能率協会マネジメントセンター

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