理解できないものを、好きになる。
50代を過ぎて頑固といわれる人は、企画書を見て「このタイトル、世の中はわかるかな」と言います。実際は、自分がわかっていないのです。
わからないものを認めていける寛容性から、色気が生まれます。
すべてが理解できると思っていると、しんどくなります。「これ、わけわからないんだよね」というものをどれだけ買えるかが勝負です。
老舗の東京画廊代表の山本豊津さんは、「自分がわからないものを買う。わからないものは未来の自分」と言います。色気は、その人の過去ではなく、未来の潜在性にあるのです。
「まわりの人は自分を理解してくれない」とよく言います。理解されてしまったら、「あの人はわかりやすい人」と言われます。本当は、わかりにくい人がモテるのです。
たとえば、すごくケチな人がいました。その人が、好きな女性にハマってムダづかいしました。「あんなにケチな人が、この女性にだけはお金をだだ漏れに使っている」という矛盾が色気です。
私は、経営者には恋愛することを勧めています。経営は、ストイックに理詰めでいくから成功するのです。恋愛は、理詰めではうまくいきません。ひたすら時間とお金と精神力のムダづかいです。見返りは確定していないし、相手の気分次第なので方程式もないのです。
恋愛は、ひたすら非合理です。
人間は、合理的なことだけをしても魅力は生まれません。一方で、非合理的なことだけをするのは、ただの危ない人です。常識があった上で、常識からはずれたことができることが大切です。
合理と非合理を組み合わせることで、色気が生まれるのです。
みんなが「つまらない」という人のいいところを見つける力
愛し力のある人は、理解できないものを見た時に、必ずいいところを一つ見つけられます。
まわりの人が「◯◯さんて、つまらない」と言っても、「でも、あいつはこういういいところがある」と、自分でその人のいいところを見つけるのです。この自発性がその人の鑑識眼になっていきます。
たとえば、ガラガラの食べもの屋に一人で来ている人は、そのお店のいいところを何か見つけているのです。
ソムリエは、グラス1杯100円のワインも「これはこれでおいしいんだよね」と言います。100円のワインにも一つの魅力を見つけ出すのです。高いワインは、いいところがたくさんあるのでシロウトでも見つかります。
値段が安いものほど、いいところを見つけるのがプロです。
古美術鑑定家の中島誠之助さんとテレビ番組で奈良・吉野に行った時のことです。
土産物屋さんに入った時、「中谷さん、いいモノがありましたよ」と言うので、さすがお宝を発見したのかと思ったら、耳かきでした。土産物なので、何かいわれがあるわけではありません。それでも、中島さんは「これ、使いやすいよ」と喜んでいました。
目利きといわれる人は、自分からそのモノのいいところを見つけられるのです。