足元の急速な米ドル安・円高は短期的な「下がり過ぎ」
最近にかけての米ドル安・円高がいつまで続くかを考えるうえで、相場水準などが今回と似ている「1998年の円安から円高へのトレンド転換のケース」について検証します。
1998年は、8月に147円で米ドル高・円安が終了すると、その後はほんの1ヵ月で130円を割れるまで、一気に20円近くも米ドル安・円高へ大きく動くところとなりました(図表4参照)。
そして今回、10月の151円から1ヵ月あまりで20円近くも米ドル安・円高となっているわけですから、両者のプライス・パターンは似ていると言って良いでしょう。
ところで、1998年の場合、9月に入り130円割れで米ドル急落は一息つくところとなりましたが、その一因は米ドルの短期的な「下がり過ぎ」だったのではないでしょうか。
米ドル/円の90日MA(移動平均線)かい離率はマイナス10%前後に拡大すると、短期的な「下がり過ぎ」懸念か強くなります(図表5参照)。
1998年9月にかけて、米ドルが一時130円割れまで急落するなかで、同かい離率は終値ベースでマイナス7%程度まで、ザラ場ベースではマイナス8%以上に拡大しました(図表6参照)。
以上のように見ると、1998年に円高トレンドに転換した直後の米ドル急落が一巡したのは、米ドルの短期的な「下がり過ぎ」懸念が一因だった可能性があるでしょう。
さて、米ドル/円の90日MAは、2日現在で141.6円程度ですから、この日一時133円台まで米ドルが急落したところでは、同かい離率はマイナス5%以上に拡大したと考えられます。
その上で、目先において130円に向かうようなら、同かい離率はマイナス8%程度まで拡大し、短期的な米ドル「下がり過ぎ」懸念が一段と拡大する可能性がありそうです。
12月は、米11月CPI発表や12月FOMC(米連邦公開市場委員会)が、年内最後の注目イベントとなりそうですが、それまでに米ドルの短期的な「下がり過ぎ」がさらに拡大し、130円の大台を割れるかが大きな分岐点ではないでしょうか。
年明け以降、米金利上昇を手掛かりとした米ドル買い再開となるかは、130円割れを回避し、パニック的な米ドル安・円高が安定を回復できるかが目安と考えられます。
以上を踏まえると、12月の米ドル/円の予想レンジは、130~137.5円で想定したいと思います。
吉田 恒
マネックス証券
チーフ・FXコンサルタント兼マネックス・ユニバーシティFX学長
※本連載に記載された情報に関しては万全を期していますが、内容を保証するものではありません。また、本連載の内容は筆者の個人的な見解を示したものであり、筆者が所属する機関、組織、グループ等の意見を反映したものではありません。本連載の情報を利用した結果による損害、損失についても、筆者ならびに本連載制作関係者は一切の責任を負いません。投資の判断はご自身の責任でお願いいたします。
【関連記事】
■税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】
■月22万円もらえるはずが…65歳・元会社員夫婦「年金ルール」知らず、想定外の年金減額「何かの間違いでは?」
■「もはや無法地帯」2億円・港区の超高級タワマンで起きている異変…世帯年収2000万円の男性が〈豊洲タワマンからの転居〉を大後悔するワケ
■「NISAで1,300万円消えた…。」銀行員のアドバイスで、退職金運用を始めた“年金25万円の60代夫婦”…年金に上乗せでゆとりの老後のはずが、一転、破産危機【FPが解説】
■「銀行員の助言どおり、祖母から年100万円ずつ生前贈与を受けました」→税務調査官「これは贈与になりません」…否認されないための4つのポイント【税理士が解説】