システム導入を巡って父との初めてのケンカが勃発!
入社から数年たって社内でも信頼してもらえるようになった頃、仕入れや売り上げを管理するシステムの導入を提案しました。これまで、直営の飲食店の発注は限られた社員と父で回していました。でも店舗数が増えるのに伴い、トラブルも増えていたのです。
提案を具体化していくため、実際にシステムを活用している他社を見学させてもらったり、さまざまなシステムを比較してみたり。その過程で、自社の弱みをカバーするためにシステムが必要だということも強く感じました。
まずは自社の課題や、考えられる今後の展開などに関する考えをまとめ、そのうえで父に話しました。父はもともと新しもの好きで、変化を頭から否定する人ではありません。これまでも「自分はタッチしないけれど、やれるならやってくれ」と受け入れてくれることがほとんどでした。ただし……経費がかかる場合は別です。
当然ですが、システム導入には多額の費用がかかります。父の答えは「ノー」。
このときは入社以来初めて、父とケンカになりました。
社長の承認を待たずに始めたシステム導入
私がシステム導入を提案したとき、直営飲食店は2店舗でした。父は毎朝、市場へ仕入れに行きます。当然、そのためには何がどれぐらい必要かをまとめなければなりません。
当時は、各店舗や取引先からの注文が当日の朝までにFAXや電話で送られてくるスタイルでした。すべてをチェックし、電卓で足し算。仕入れ前の準備には約2時間かかります。そのために、早朝から出勤する必要がありました。
おまけにFAXは手書きなので、読みづらかったり書き間違えがあったり。書き方がまちまちなことも問題でした。ただ「えび」と書かれていても、「ブラックタイガー」なのか「赤えび」なのかわかりません。お店側には「えびといえばブラックタイガーに決まってる」といった思い込みがあるのでしょうが、注文をまとめる側にしてみれば、店ごとのルールをすべて覚えておくことはできません。
店側が裏返しで送信したために、白紙のFAXが届いていたことも。仕入れ前の早朝に電話をするわけにもいかず、担当者と連絡がついたのは市場の閉店後、なんてこともありました。
IT企業出身の私には、信じられないほどアナログな世界。データ化すれば、ほとんどの問題が解決できるのに、と思っていました。