スタッフを信じて頼ることで共感が生まれる
魚屋の仕事を始めた頃は、自分の仕事は「全部決めて指示を出す」ことだと思っていました。そのため、わからないことがあっても必死で調べ、自分なりの結論をもとにスタッフに指示を出していました。
当時は若手が少なかったので、自分より年上のベテランばかり。スタッフにしてみれば、納得できないことも多かったと思います。また、私自身もやりにくさを感じることがありました。
私はもともと、うまくいかないことがあると原因を突き詰めたくなるタイプ。このときも「なぜうまくいかないんだろう?」とひたすら考えました。結論は、「人の心は理屈では動かない」。私には、「相手はどう思うか」という視点が不足していました。「自分がするべきこと」だけで頭がいっぱいになってしまっていたのです。
仕事は、ひとりではできません。ひとりで考えて最善の指示を出すことより、共感や納得が得られる形で仕事を進めていくことのほうがよい結果につながるのかな、と気づきました。
それをきっかけに、私はスタッフに頼るようになりました。わからないことはだれかに聞く。知らないことは知らないと言う。全部自分で決めなければ! などと肩肘張るのをやめ、「チームでなんとかする」と考えるようになってから、仕事がとてもスムーズになりました。
「なぜですか?」「教えてください」「任せます」。私にとってこの3つは、チームの力を高めてくれる魔法のフレーズです。
ひとりひとりのやりがいを大きくすることでチームも育つ
私の仕事は店舗での接客から始まりましたが、最近では自分が現場に出る機会は減り、組織を育てることに力を入れるようになっています。その中でスタッフ教育に役立っているのが、店舗ごとに作っているLINEグループです。LINEは情報を共有するのが簡単で、アルバイトやパートのスタッフと直接つながれることも大きなメリットです。
たとえば、SNSなどでお客さまからのうれしいコメントを見つけたときは、すぐにスタッフと共有します。私のねらいは、お客さまが評価してくれた点に気づかせること。本人がいいと思っていることと、お客さまが求めていることが一致しているとは限りません。お客さま目線のコメントを通じて、こんなことが喜ばれるんだ、とスタッフ自身に発見してほしいのです。