魚屋の2代目は「デジタル化」に猛反対の父と古参スタッフをどう説得したか

魚屋の2代目は「デジタル化」に猛反対の父と古参スタッフをどう説得したか
(※写真はイメージです/PIXTA)

人気ユーチューバー「魚屋の森さん」こと森朝奈氏は、IT企業から転身して家業の魚屋に後継者となるため入社し、試行錯誤しながら、父親である社長やスタッフの信頼を獲得していきました。入社して数年、事業が順調に成長する半面でトラブルも増加していることを危惧した森氏は、アナログとマンパワーに頼った仕入れや売上の管理業務を効率化すべく、システムの導入を提案します。ところが、予想以上の反発が待ち受けていました。

マンパワーありきの考え方には限界がある

システム化の提案を父もベテランスタッフも全否定

さすがにふたつ返事で受け入れられるとは思っていませんでしたが、システム導入に対する父の反対は予想以上に強硬でした。魚は旬のもので価格が一定ではないし、店のおすすめ料理だって毎日かわる。決まった形に当てはめてデータでやり取りするのは無理! というのが父の言い分です。

 

各店舗からの注文は、「常連さんの予約が入っているので、お刺身として出せるよいものを2〜3種」「本まぐろを2キロ。でもキハダマグロだったらいらない」なんて自由な書き方をされています。たしかに、入荷の状況が日によって違う魚を扱うためには、こうした「幅」は必要です。

 

ずっとアナログでやってきた父やベテランスタッフにとっては、「データ化=自由度がない」というイメージだったのでしょう。でも私だって、思いつきでシステム導入を提案しているわけではありません。数値化できる部分は数値化して手間を省き、数値化できない個別の希望についてはコメント欄を設けるなり、FAXを併用するなりして対応できるように……と対策は用意していました。

 

でも、システム化はすべてを機械的に処理するためのものではないこと、仕事の効率化やミスの防止につながることなどをていねいに説明しても、社内ではまったく受け入れられません。社内には「そんな面倒なこと、いちいちやってられないよ」と、私の提案を全否定する雰囲気が漂っていました。

 

社長の同意は得られなくてもシステム化のメリットが大きいことには自信があった

ちょうどその頃、3店舗めの直営店がオープン。開店のバタバタもあって、頼んだものが来ない、価格がわからないなど、仕入れに関するトラブルが続きました。

 

今後、店舗数が増えていったら、アナログでは対応しきれなくなるのは目に見えています。「現場が頑張ってなんとかすればいい」なんてマンパワーありきの考え方を続けていたら、お客さまにまでしわ寄せがいくことになりかねません。

 

さらに、父が体調不良で1週間の入院。父にしかわからないことも多く、仕入れはさらに混乱しました。今のやり方は、もう限界! 私は、「絶対に成功させる」と決心し、社長の承認がないまま、システム導入を進めることにしたのです。

 

多額の経費もかかるので、慎重に準備を進めていました。納得できるまで試行錯誤していたので、システム導入が業務の改善につながる自信もありました。

 

導入後しばらくして、父が検査のために再入院しました。その間は、父が病院でデータを確認し、私に必要な指示を出すことに。パソコンさえあれば情報が見られるようになっていたため、私が父にかわって各店舗や取引先との受発注を取りまとめることで、大きな問題もなく入院期間を乗りきることができました。

 

FAXと電卓で同じことをしたら何倍もの時間と人手がかかり、ミスも多かったはず。この体験で、父はシステムの便利さを少しだけ認識してくれたようでした。

 

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共感ベース思考 IT企業をやめて魚屋さんになった私の商いの心得

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森 朝奈

KADOKAWA

SNSでストーリーと信頼をシェア。「共感」からすべてが始まる! 代々鮮魚卸を営む一家に育った著者。女性が極端に少ない魚業界へ家業の2代目として飛び込み、YouTubeやSNSで「思い」をシェア。「魚好き」とつながりながら、…

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