戦争の後には戦後不況の成長率鈍化が
当時の日本は日英同盟を結んでいたため連合国側として参戦しているのですが、アジア地域で大きな戦闘はなく、日本は戦争の恩恵だけを受けることができたと考えられます。
戦渦に見舞われた欧州の企業に代わり、日本企業には多数の注文が寄せられることになり、業績は急拡大していきました。株価も急上昇し、日本経済は、初の本格的なバブルを経験することになります。80年代のバブル経済や2000年のネットバブルと同様、巨万の富を築く人が続出し、今でいう株式ブームに似た現象も発生しています。
朝鮮戦争も同様です。朝鮮戦争は日本のすぐ近くで発生した米ソの代理戦争ともいうべき戦争ですが、日本は米軍の前線補給基地という位置付けになりました。このため、日本企業には処理しきれないほどの注文が舞い込み、後に朝鮮特需と呼ばれる状況が発生しています。
日本経済は敗戦によって壊滅的な状況となりましたが、朝鮮戦争によって奇跡の復活を遂げることになります。その意味では、朝鮮戦争がなければ、現在の日本は存在していなかったかもしれません。
■米国では目立った戦後不況はないが
基本的に米国においても、戦争の遂行によって実質GDPが押し上げられるという現象が見られました。また、戦争の後には戦後不況と思われる成長率鈍化が観察されるという点も同じです。
ただ、図3-2にもあるように、米国の場合、純粋に戦争の影響で経済成長が鈍化したのは、第二次世界大戦終了後だけです。この時には、実質GDPがマイナスとなり、その後、しばらく横ばいの状況が続きました。ベトナム戦争末期にも成長の鈍化が見られましたが、これは70年代を通じて米国を襲ったスタグフレーションの影響が大きく、ベトナム戦争はその原因の1つに過ぎません。
イラク戦争の後にも、リーマンショックという極めて大規模な不況を経験することになりましたが、これも戦争が原因とはいえません。好景気が行き過ぎ、不動産バブルが破裂したという要因が大きく、純粋に経済的な問題といってよいものです。
ただ、長期的なGDPの成長を見ると、1960年代や1980年代、1990年代など、大きな戦争がなかった時期の方が経済のパフォーマンスは良好でした。図3-3からもわかるように、経済成長が活発な時期は、GDPに占める年間の軍事費の割合は低下しています。
やはり、規模の大きな戦争と経済成長の鈍化には何らかの関係がありそうです。
加谷 珪一
経済評論家
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