(※写真はイメージです/PIXTA)

「眼瞼下垂」は、その名の通りまぶたが下がってきて目が見にくくなる病態のことである。発症頻度が高い疾患のため、悩まれている方も多いだろう。「美容医療国際職人集団」と言われるJSAS会員であり、高須克弥医師の孫弟子にもあたる医療法人美来会理事長、九野広夫医師。九野氏は、美容医療の他院修正専門医院を立ち上げ、これまで数多くの不幸な医療事故や医療過誤を目にしてきた。本稿では九野氏に、「若年性眼瞼下垂」について解説いただく。

目頭切開の「NG手術」と新技術開発秘話

従来から標準的に行われていた三日月型単純切開やW形成法では、蒙古ヒダをどう切除しても縫合時に幾分かの牽引力が必ず発生して、肥厚性瘢痕や瘢痕拘縮を生じ得ます。三日月型やW型のデザインだとどんなに曲線を取り入れても切除幅分の皮膚伸展のため物理的負荷による術後の線維化を必要以上に生じせしめてしまいます。

 

更に、切除分を横方向にのみ縫縮するため、内側に牽引された様に目つきがキツくなり、却って開眼度が低下してしまいます。加えて、内眼角下部にも隠れようのない瘢痕を残してしまうのです。

 

形成外科医の折登先生が2000年に学術誌*上で発表されたZ形成皮弁術のデザインパターンは、プラトンのイデア論の様にたった1通りのデザイン概念でした。

 

しかしこのデザインのみでは汎用性が乏しく、事実、学習したであろう医師達の中で非オーダーメイド性の紋切型デザインZ形成皮弁を行って、結局失敗したという修正依頼の症例も近年増えてきました。それを個別の瞼にマッチングさせたオーダーメイド性にまで昇華させる必要があると、私は当初から考えていました。

 

紋切型Z形成の目頭切開でも同様に傷跡が目立つ上に、却って眼瞼下垂を誘発しキツイ目つきになってしまいがちです。つまりZ形成時においても、切開デザインと縫合の組合せによっては肥厚性瘢痕や瘢痕拘縮が生じ得ますので、牽引解除をしつつ傷跡を表側に出さない㎜以下単位の技術改良が必要でした。

 

直線的なZ形状デザインだと目つきも直線的になるので、当院では個別のモウコヒダにマッチングさせた各々異なる形状のZにしています。そうすることで瘢痕への物理的牽引負荷も軽減し、結果的に切開痕も目立たなくなるのです。

他院紋切型Z形成目頭切開による医原的眼瞼下垂を治療した症例

症例:25歳 女性 他院目頭・目尻切開術後の修正

 

他院修正歴: 22歳時 非オーダーメイド(紋切型)目頭切開、目尻切開、埋没法  23歳時 他院目頭修正

 

希望デザイン:涙丘があまり見えない様に、また目頭の傷を自然に目立たない様にして欲しい。末広・平行中間型の曲線ラインで、やや尖った目頭にしたい。

 

方法: 両瞼 完全オーダーメイド Z形成目頭切開術LEVEL3 &新挙筋法2針4点固定法 &当院オリジナル 目尻切開LEVEL3

 

治療合併症:内出血・炎症(発赤・熱感。・腫脹)・線維化等

ごくまれに糸露出・感染・後戻り・麻酔アレルギー等

Dr.コメント:

前医がどんなに善意で手術に臨んだとしても、結果的に目頭の手術瘢痕が線維化による引き攣れを起こしていて、開眼度(特に目頭側)も二重ラインの幅や形も想定通りに実現できていない様です。

 

術後の仕上がりは閉眼のみならず開眼した時の左右差までも計算に入れなければならないのですが、それには上眼瞼の皮膚の厚みやタルミ、陥凹度や眉との距離、脂肪の量や睫毛の開眼度、そして瘢痕の治癒予測まで全ての要因を同時に考慮しなければなりません。

 

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