(写真はイメージです/PIXTA)

2022年の米国株式は、米国で収まらないインフレと急激な金利上昇や企業業績が弱含む中でも年後半は底堅く推移しました。しかし、現時点で米国株式自体に割高感があることに加えて、2023年は米国企業の業績が一段と厳しくなることが見込まれます。米国株式の見通しを、ニッセイ基礎研究所 前山裕亮氏が解説します。

3―最後に

2023年も2022年と同様にインフレや金融政策の動向に一喜一憂する展開が続くかもしれないが、それと合わせて2023年は2022年以上に米国企業の業績鈍化や低迷が株式市場で材料視されていくと考えている。つまり、2023年に米国でインフレが足元で期待されているように収まってきたとしても、米国株式については株価自体も割高であることも相まって、あまり楽観視しない方がよいだろう。このまま穏やかに高値を維持して2022年を終えたとしても、2023年に入って早々の米国企業の決算発表あたりで株価が崩れる可能性がある。

 

より具体的には、2023年前半のS&P500種株価指数は、米国企業の2023年の業績がさらに下方修正されることを考慮すると、予想EPSが200ポイントから225ポイント、予想PERもやや低下して14倍から16倍となり、2,800ポイントから3,600ポイントあたりのレンジで推移するのではと想定している。もし現在考えられているようにインフレが終息せず、2023年も金融引締めが一段と行われるような展開となると、米国株式はさらにもう一段低い水準になるかもしれない。

 

日本から為替ヘッジをせずに米国株式に投資をしている投資家にとっては、2022年は円安の進行によって助けられてきた。しかし、2023年は円安が一服もしくは円高に反転することも考えられ、2023年前半は2022年以上に厳しい展開となり、より我慢や忍耐が必要となる可能性もあるだろう。

 

ただし、2023年中にインフレが早期に収まり金融引締めが打ち止めされ、米国企業の業績も底打ちすると、やや前のめりに2023年後半あたりから先ほどのレンジの上限を突破してくる展開もあるかもしれない。つまり、米国株式について楽観することはできないが過度に悲観する必要もなく、積立投資や長期投資であれば、いつも通りに2023年も粛々と米国株式投資を続けていくのも良いと思われる。

 

米国株式が筆者の予想通りに下落しても、慌てることなく余裕をもって気長にそのうち戻るのを待っていただきたい。長期投資の場合は慌てて売買しない方が、特に下落時に下手に売却しない方が結果的にうまくいくことが多いためである。

見方を変えると、2023年前半は2020年3月のコロナ・ショック以来の米国株式への絶好の投資タイミングになる可能性もある。投資余力がある方は米国株式が大きく下落した場合にそのタイミングで思い切ってさらに追加投資していただくと、長い目でみたときに資産形成がより進むことが期待できるだろう。

 

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※本記事記載のデータは各種の情報源からニッセイ基礎研究所が入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本記事は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
※本記事は、ニッセイ基礎研究所が2022年11月14日に公開したレポートを転載したものです。

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