2―2023年の米国株式にのしかかる2つの懸念
2023年も2022年後半のように米国株式が底堅く推移することを期待したいが、そうならない可能性が高いと筆者は考えている。理由は2つある。
まず1つ目は、米国株式が2022年後半に悪材料の中であまり下落しなかった反動ともいえるが、現時点で米国株式に割高感があることをあげたい。足元のS&P500種株価指数の予想PER自体は17倍台と過去と比較して決して低くはないが高すぎるわけでもない、つまり予想PER見る限り、許容される株価水準にあるようにみえる。しかし、米長期金利が3.8%と2014年以降で最も高い水準にあることを考慮すると米国株式はかなり割高にあると考えている。
実際に予想PERの逆数から米長期金利を引いた米国株式のリスク・プレミアム(【図表3】青線)をみると、過去は概ね3%以上で推移してきた。それが2022年8月以降は低下し、足元2%前後となっている。
これは単に株式市場が債券市場と比べてインフレや金融政策の動向を楽観視しているとみることもできる。ただ、株式リスク・プレミアムが足元2%しかないため、過去の下限である3%を基準にすると米国株式は米長期金利が速やかに1%低下することを織り込んだ水準に株価があるといえる。株式市場が金利やその背景にあるインフレと金融政策の動向を楽観しすぎているように思われる。
そして2つ目は、米国企業の業績が2023年に一段と厳しくなる可能性が高いことである。S&P500種株価指数の業績予想を詳しくみると、今期である2022年(左側)の利益予想(赤線)は6月以降、下方修正され続けていたが、その一方で売上高予想(橙線)は横ばいであった【図表4】。つまり、2022年は景気が堅調でトップラインである売上は想定通りであるものの、コスト高等によって想定以上に利益が出ずに利益予想が下振れしてきたといえる。
来期2023年の業績予想(右側)も、10月中旬までは今期2022年の業績と同じで売上高予想はほぼ据え置かれていたが、利益予想が下方修正されてきた。しかし、10月下旬以降は2022年の業績と異なり売上高予想も利益予想とともに下方修正された。
2023年は米国が本当に本格的な景気後退を迎えてしまうか分からないが、少なくとも2022年に行われた急激な金融引き締めによって2022年以上に景気が一時的にせよ減速することは間違いない。しかし、2023年の売上高予想が見直されだしたのが、この10月下旬以降であることを踏まえると、現時点では景気減速が2023年の業績予想に十分に織り込まれていない可能性が高い。
ゆえに2023年の米国企業の業績予想は売上、利益ともに今後さらに下方修正されていくことを見込んでいる【図表5】。米国株式は1つ目の理由で触れたように現時点の業績予想を元に考えても割高感がある。つまり、現在の株価は米国企業の業績予想の今後の下方修正が十分に織り込まれていない状況といえる。そのため、2023年前半は米国企業の業績見通しの引き下げに伴って、米国株式が下落するのではないかと筆者は考えている。
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