ロシアは大丈夫か?「戦時インフレ」国債大量発行の戦費調達が破壊する国民生活

戦争と経済にはどんな関係があるのか②

ロシアは大丈夫か?「戦時インフレ」国債大量発行の戦費調達が破壊する国民生活
(※写真はイメージです/PIXTA)

戦争の遂行は、名目上の経済規模を拡大する効果はありそうです。しかし、経済の基礎体力を無視した戦費調達を行った場合には、国民生活を破壊するなど各方面に影響が出てくることになります。経済評論家の加谷珪一氏が著書『戦争の値段 教養として身につけておきたい戦争と経済の本質』(祥伝社黄金文庫)で解説します。

戦争は国民の心理面の影響も大きい

■心理面の影響も無視できない

 

これに加え、戦争には心理的な影響もあります。

 

戦争が発生することで、心理的にネガティブな影響が生じ、消費が減る可能性がある一方、逆に国威が発揚されて消費が喚起されることになるかもしれません。また戦争特需を期待する人が一定数出てきますから、こちらも消費にはプラスの効果をもたらす可能性があります。

 

戦争と株価については後述しますが、戦争の初期には株価が上昇するケースが多く、消費にもプラスとなることが多いようです。一方、戦局が悪化してくると、株価は下落し、消費者の心理も悪化してくることになります。

 

仮に戦争が行われていても、多くの国民には日常生活がありますから、基礎的な消費がそう簡単に影響を受けるわけではありません。しかし消費はGDPの中でもっとも大きな割合を占める項目ですから、わずかな変化でも景気に影響します。消費者心理が悪化しない形で戦争を遂行しない限り、最終的にはマイナスの影響が出てくると考えた方がよさそうです。

 

まとめると、戦争の遂行は、名目上の経済規模を拡大する効果はありそうです。しかし、経済の基礎体力を無視した戦費調達を行った場合には、各方面に影響が出てくることになります。特に国債の大量発行に伴うインフレの影響は極めて大きなものとなるでしょう。

 

加谷 珪一
経済評論家

 

 

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本連載は加谷珪一氏の著書『戦争の値段 教養として身につけておきたい戦争と経済の本質』((祥伝社黄金文庫)より一部を抜粋し、再編集したものです。基本的に書籍が出版された2016年当時の記述となっており、各種統計の数字は2016年時点のものです。国際情勢が変化し、追記が必要な部分については、著者注として補足しています。

戦争の値段――教養として身につけておきたい戦争と経済の本質

戦争の値段――教養として身につけておきたい戦争と経済の本質

加谷 珪一

祥伝社

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