「瞬きができる」眼瞼下垂の方は全て、新挙筋法+α(※)で治療可能
もっとシンプルに言えば、瞬きができる(挙筋が麻痺していない)眼瞼下垂の方は全て、新挙筋法の適応(つまり充分に治療可能)になります。尚、必要時には適応や患者さまの御希望等を見極めたうえで(マイクロ切開脱脂やZ形成目頭切開)技術(※)を組合せた手術を行います。
何故なら、眼瞼下垂の原因が神経や筋肉levelでは起こっておらず、多くが挙筋腱膜の弛緩、上眼瞼のタルミや陥凹、脂肪過多、蒙古ヒダの牽引、そして全切開を伴う手術によって生じた医原的眼瞼下垂だからです。
しかし解剖学書通りの瞼の構造を持っている人間なんていない上に、下垂の度合いのみならず皮膚、眼窩脂肪、眼輪筋の厚みや密度に至っては個人差の幅が広く、左右差まであります。或る年度の学会の会場では他院の医師に「透視能力がなければ切らずに治すなんて不可能だよ」と言われたこともありました。
確かにその通りで私も最初はここまでできるとは思っていませんでした。
実は透視能力が無くとも、4D(立体構造+動的次元)の個別オーダーメイドデザインを徹底して職人技術を陶冶していく内に、大抵どんな瞼構造の眼瞼下垂の方々の治療もできる様になってきただけなのです。
シミュレーション時に個別の瞼ごと、瞼を折り畳ませる最適解を出した際、その位置と折畳む方向と深さを同時にメモリーし、それを忠実に再現させるポイントに糸を挿入して結紮する技法を、毎回ひたすら応用することに尽きます。
一部の真性眼瞼下垂の方も治療可能
更に最近では真性眼瞼下垂症例に対しても、新挙筋法を試みて一部に良好な結果を得ることができています。
一見、真性眼瞼下垂に見える方々の中にも、挙筋は正常に運動するが挙筋腱膜が未発達である場合、挙筋の運動が相対的に弱いだけの場合、挙筋の麻痺が(脳神経疾患などで)一時的な場合などは、新挙筋法の適応となって根治できた方が多数いらっしゃいます。
神経や筋肉が麻痺をしているのかどうか、薄く繊細な挙筋腱膜が充分に発達して存在しているかどうか、医師が診察してもMRIで検査しても(脳疾患など他に原因が判明する場合を除いて)殆どの場合、厳密な責任病変部位を特定できないことも少なくありません。
自験例ですが挙筋腱膜を完全に離断されていた方や、従来法の眼瞼下垂治療手術後に発症した「医原的眼瞼下垂」の症例でも治療に成功した症例がございます。
全切開を伴う従来法でも治らなかった眼瞼下垂を新挙筋法で治療した症例
症例:40歳男性
他院手術歴:37歳時、全切開を伴う眼瞼下垂治療
御希望:3年前の治療でも治らなかった右側の眼瞼下垂を根治させたい。
当院治療法:右側のみ。当院オリジナル新挙筋法2針4点固定法
治療合併症:内出血・炎症(発赤・熱感。・腫脹)・線維化等
ごくまれに糸露出・感染・後戻り・麻酔アレルギー等
Dr.コメント:
他院で3年前に受けた全切開を伴う眼瞼下垂手術(短縮術か前転法かは御本人様も聞いていないとのことでしたが)でも何故根治できていなかったかと言えば、恐らく挙筋腱膜の短縮が上手くいかなかったか術後の硬化した瘢痕が瞼の挙上の妨げになっていた可能性があったからでしょう。
再切開すると却って眼瞼下垂が悪化すること(医原的眼瞼下垂)さえあるため、修正目的であっても禁忌だと当院は考えます。
術後15ヵ月経過しても尚、右側の二重ライン幅が左側と比較して少しだけ広く見えていますが、僅かな線維性の瘢痕がまだ挟まっている状況です。蒙古ヒダのツッパリもあったため、互い違いのラインを1本化しながら開眼度を左側に合わせるための挙筋度を調整して、この方の瞼にベストマッチングする手術を行いました。
新挙筋法では4Dデザインによる開眼度の左右差調整もでき、過去の症例のDATA集計によると4点固定以上の1回目の手術で(原因によってマイクロ切開脱脂やオーダーメイドZ形成目頭切開を併用することがございますが)眼瞼下垂の根治率が9割前後、再発率が1割未満です。
術後2ヵ月前後すれば、瞼の折り畳みや開閉眼が安定してくる傾向があり、永続的な治療効果も充分に見込めます。仮に眼瞼下垂が再発または多少挙上が不足した場合でも、2点以上の追加固定で更に安定化を図ることができています。そして最終的には過去全例、根治に至っています。