四谷さん(男性・50代※仮名)は、亡父が所有していた100坪の広大な実家を姉とともに相続することになりましたが、相続の方法をめぐって姉と意見が真っ向から対立してしまいました。相談を受けた不動産エージェントCは、姉にも会って真意を聞き出したうえで、解決策として、「土地の分割」を行ったうえで片方を売却して代金を姉の取り分とし、残りを四谷さんが取得して「賃貸併用住宅」を建てるという提案を行いました。

「相続税対策」より「日々の収支」のほうが大事なことも

四谷さんのケースの実情を明かすと、土地100坪を丸々使って賃貸併用住宅を建てるのはあまり得策とは言えませんでした。

 

なぜなら、相続する際には相続税の特例(小規模宅地の特例、貸家建付地の評価減など)を利用できますが、それらはあくまで相続が発生してからの話となるからです。

 

今回の場合、すぐに四谷さん自身が亡くなり次の世代への相続が発生するという想定は現実的ではありません。つまり、相続税対策以上に「日々の収支」を考えるほうが重要だったのです。

 

こうした事情も勘案して、100坪丸々使った計画案や収支計算書に疑問を感じたエージェントが自分自身のもつネットワークを活用し、税理士など専門家のアドバイスを参考にしながら、相続税に偏らない的確な節税対策を考慮し、土地分割を提案したのです。

 

もし専門的な知識が乏しい先に依頼してしまうと、相続税の圧縮にはなるものの相続が発生するまでの支出等を見逃してしまう可能性が考えられます。

 

たとえば、「マイナス資産を形成することで相続税を減らすことができるので、ローンを組んで収益物件を建てましょう」という担当者の営業トークはよくあります。

 

しかし、この言葉に促されるままアパートを建てると、相続税対策は十分だが相続が発生しない限りは想定以上の出費が発生する、といった悲劇を招く場合もあります。

 

大きな資産の相続には相続税が付きものであるため、ついつい相続税のみがフォーカスされがちです。しかし、実際には、相続税対策と銘打って賃貸住宅を建てたはいいが、思ったほど収入を得ることができずに日々の収支が回らず、売却したいという相談も少なくないのです。

 

このように、「売主が最大の利益を得るにはどういった戦略が考えられるか」「その利益を得るうえで弊害となる課題はないか」と細部にまで気を配って、時間を掛けて対策を立てていくことで、初めて売主の利益を最大化できるのです。

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悩める売主を救う 不動産エージェントという選択

悩める売主を救う 不動産エージェントという選択

大西 倫加,長嶋 修

幻冬舎メディアコンサルティング

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