当たり前のことが、当たり前に通じる「不動産業界」へ
不動産エージェントは、当たり前のことを、当たり前のように実践している、ただそれだけの存在です。
「自分がお客さんの立場になったとき、どういったサポートを受けたいか」という姿勢を決して崩さず、不動産の悩みを抱える方に寄り添ったサポートに励んでいます。
不動産エージェントを始めた頃、私たちは業界他社から奇異の目で見られたものでした。不動産仲介会社に声を掛けると、「『囲い込み』をいっさいしないなんて何か裏があるんですか?」と訝しがられることもありました。
「囲い込み」とは、不動産仲介会社が、売主と買主の双方の代理人となって双方から手数料を受け取る「両手取引」を行うため、あえて買主を広く募ることをせず、自分の手の届く範囲での営業活動に終始することをさします。
私たちとしては当たり前のことを当たり前のように実践しているだけです。むしろ「両手取引」狙いで「囲い込み」をする体質のほうに業界の闇を感じていたのですが、なかなかその趣旨は理解してもらえませんでした。
しかし、無事に売買取引を成約し、こちらに裏がないことが分かってもらえると、以降は積極的に私たちがあずかっている不動産を広告してくれるようになりました。私たちの志に共感してくれる協力会社は着実に増えており、不動産をスピーディかつ高値で取引するネットワークは広がり続けています。
私たちの志が共感を呼び続け、業界のすみずみまで浸透していけば、両手取引狙いの囲い込みといった利己的な行動に走ることのない、当たり前に健全な不動産取引市場が形成されていきます。
本連載では、不動産をお持ちの方へ向けて、不動産エージェントの活動内容を実例に基づいて紹介してきました。もちろん、不動産エージェントは売主だけでなく買主側の立場になって、不動産探しのサポートをすることもあります。しかし今回の連載に当たってはあえて売主の売却ストーリーに絞って話をしました。
その理由は、現状の利己的な不動産業界の体質を変えるには、まずは売却不動産のあずけ先から変えていくべきであると考えたからです。
買主のサポートをする際、私たち不動産エージェントがどれだけ奮闘したとしても、顧客の不動産をあずかっている不動産仲介会社の囲い込みを突破することはできません。「御社で紹介している不動産を内見したいのですが」と問い合わせても、何かしら理由をつけてかわされてしまったら抗いようがないのです。
この状況を打破するには売主サイドの意識を改革するしかなく、不動産のあずけ先を代えてもらうことが必須なのです。
本連載を通して不動産エージェントに共感してくれた方は、囲い込みを絶対にしない不動産エージェントにまず相談する、という発想をぜひ忘れないでいてください。そして本書に登場した売主たちのように、この方にならと思える買主との出会いを果たし、後悔のない取引をぜひとも体感してください。
最近では不動産業界の裏側などと称して、不動産関連事業者の悪事を報道するドキュメンタリー、あるいは漫画やドラマ作品が世に送り出されています。不動産業界そのもののイメージがマイナスに染まりきっています。しかもそのように後ろ指をさされるのが当然であるかのように、悪事を認めるかのように、業界のあり方に違和感を抱きながらも、今日も顧客を騙さんとする不動産関連会社が実在しているのです。
私たちはそのような不動産業界の現状に疑問を抱き、不動産の仲介業というものが、もっと感謝される、尊敬されるような仕事であってほしいと願っています。そして不動産エージェントが、不動産業界の未来を変えると信じています。
本連載を通して、一人でも多くの方に不動産エージェントの志と意義が伝えられることを願って執筆を終えます。ありがとうございました。
大西 倫加
さくら事務所 代表取締役社長
らくだ不動産株式会社 代表取締役社長
だいち災害リスク研究所 副所長
長嶋 修
さくら事務所 会長
らくだ不動産株式会社 会長