姉弟の「思い」を一つにまとめる
四谷さんと姉が相続した土地は広大で、2億円の価値があるという概算でした。問題はどうすれば「1億円ずつ」公平に分けられるかということでした。
そこで、エージェントCは、周辺の実際の取引事例も参考にし、この地域で土地を購入する層が建てる家の規模なども詳しく調査したうえで、価値の高い側の敷地40坪を売却すれば1億円に達する目処が立ちました。それを姉の相続分とすれば、公平な分割を実現できます。
四谷さんは、エージェントCの説明を受けて納得し、その提案を承諾しました。姉にも同様の提案を行ったところ、すぐに承諾の返事をもらうことができました。
双方から許可をもらった直後に、姉の相続分となった40坪の土地について1億円で売り出しを開始しました。できるだけ多くの購入希望者からの問い合わせがくるよう、レインズには広告掲載区分を「可」で登録しました。また、取引実績のある不動産仲介会社にも積極的に声を掛け、広告を仕掛けてもらうよう要請しました。
ハウスメーカーの協力で、土地の上に建築可能な家の規模や想定される建築費用の見積もりを出せていたので、こちらも参考として広告に載せました。単なる土地販売の広告にとどめず、その先にある土地活用の一例を見せておくことで、注目度と購買意欲を高めることが狙いです。
立地が優れていることもあり、姉所有の土地はすぐに買い手がつき売却が決まりました。四谷さんの賃貸併用住宅の建設工事もスムーズに進行し、数カ月後には想定どおりの収益と自宅間取りを有した建物を建てることが叶いました。
両者の意見を尊重した理想の折衷案だからこそ成し遂げられた最高の結末です。土地をすべて売るか、あるいはすべて利用して収益物件を建てるか、どちらか極端な手段を取っていたら、四谷さんか姉のどちらかが不服を抱えたままで、事態がさらにこじれてしまっていました。
実のところ、エージェントにとっては、全部売ったほうが手数料が多く取れる計算です。しかし、それは四谷さんサイドの幸せを無視した暴挙です。最初からそのアイデアはもたず、関わるすべての方の幸せを最大化することに力を注いだからこその、円満解決でした。
相続で揉めるときにはさまざまなケースがありますが、共通している真因は相続人たちの「思い」がバラバラになってしまっている点にあります。
今回のケースでは姉弟2人の意見の衝突にとどまりましたが、相続人が多ければ多いほど事態は複雑化し、当事者同士だけでは到底片付かない問題に発展しがちです。相続がきっかけで関係が悪くなり、身内でありながら関係の修復が困難になってしまう悲劇を招くことも少なくありません。
当事者だけだと感情のぶつけ合いになってしまうというのであれば、全員の本音を聞き出せる立場をおくことが解決の糸口となります。中立の立場を貫くことを約束し、それぞれの主張を引き出し整理したうえで最適な解決策を提案することで、本件のような円満なゴールを迎えることができます。
相続に対する豊富な経験と知識、そして何より相続人たちの本音を引き出すエージェントCの交渉力は欠かせませんでした。