同じ「築40年マンション」なのに…売値に圧倒的な差がつく納得の理由

不動産の価値は、決して「築年数」などの表面的なスペックでは決まりません。にもかかわらず、日本では長らく、建物は「新築がベストで中古は価値が落ちる」という杓子定規な考え方がとられてきました。しかし、そのような考え方は、実は、世界のスタンダードから外れているばかりでなく、不動産取引を停滞させ、売主と買主の利益を損なうものです。今こそ、価値観の根本的な転換が求められています。

建物の価値は「スペック」ではなく「管理」で決まる

建物に関する仕事に携わっていると、表面的なスペックが同じでも見た目がまったく異なる建物に出くわすことが多々あります。

 

たとえば、同じ地域の同じ規模、築年数40年のAマンションとBマンションがあったとします。スペック上は似たようなものでも、実際に目の前にするとAは手入れが行き届いていて美しく、Bは汚れやヒビが目立ち見すぼらしい外観です。

 

もしAもBも同価格で販売されていたら、多くの購入検討者がAのマンションを選ぶことになると思います。

 

マンションの資産価値は管理状態で決まります。管理次第で現状も残された寿命も歴然とした差が生じます。表面的なスペックだけで価格を決めてしまうのは、まったくもっておかしな話なのです。

 

一戸建てについても同様です。同じ年数を経ていても状態はいろいろであり、築年数だけで価格を判断することなど、本来はできるはずがありません。人間も40年の時を経れば個人差が大きく出てくるものです。

 

40歳には見えない若さを保っている人もいれば、40歳にしては老け過ぎな印象を抱かせる人もいます。建物も同じで「中年」の時期を迎えれば千差万別であり、その経歴のなかでどういったケアを心がけてきたかによって、見た者に与える印象や健康状態にも差が出ます。その差が価格にも反映されるのは当然なはずです。

 

建物の価値は新築時が最も高く、年を経るにつれて落ちていく。この概念そのものを根底から覆すため、不動産エージェントが取り入れるようになったのが「ホームインスペクション」、すなわち住宅診断です。

 

20年以上前に企画した当時、先進国でホームインスペクションを積極採用していないのは日本だけでした。そしてその景色は今も変わりません。なぜ日本が住宅診断に対して後ろ向きなのかというと、住宅に対する金融機関の担保評価が築年数などの表面的なスペックに依存しており、住宅そのものの本質的な価値をいっさい評価していなかったからです。

 

欧米ではインスペクションによる建物評価が金融機関の融資金額につながるのが常識となっています。リフォームや修繕に300万円かけた場合、その事実がきちんとデータとして記録され、300万円相当の担保評価アップにつながる仕組みとなっています。マンションであれば管理組合の運営状況も精査し、これもまた担保評価へとつなげるのが常識です。

 

日本の中古不動産は、表面上のスペックでしか担保評価をしない文化が根付いてしまっています。これでは住まいを管理している住人も、住まいを大切にし定期的にメンテナンスを施していこう、という気分にはなれません。

 

買い手もまた同じ思考です。先々どの程度の寿命があるか知れない、当たり外れの大きい中古に手を出すよりも、将来的な価値が保証されている新築を欲しがる傾向です。必然、中古住宅の流通性は著しく落ちてしまいます。日本の新築至上主義は昔も今も変わらないどころか、より現代のほうが強まっている印象です。

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    さくら事務所 代表取締役社長
    らくだ不動産株式会社 代表取締役社長
    だいち災害リスク研究所 副所長

    大西 倫加(おおにしのりか)広告・マーケティング会社などを経て、2003年さくら事務所参画。同社で広報室を立ち上げ、マーケティングPR全般を行う。2011年取締役に就任し、経営企画を担当。2013年1月に代表取締役就任。2008年にはNPO法人 日本ホームインスペクターズ協会の設立から携わり、同協会理事に就任。10年間理事を務め、2019年に退任。2018年、らくだ不動産株式会社設立。代表取締役社長就任。2021年、だいち災害リスク研究所設立。副所長就任。不動産・建築業界を専門とするPRコンサルティングも行っており、執筆協力・出版や講演多数。

    著者紹介

    さくら事務所 会長
    らくだ不動産 会長

    1967年生まれ。不動産コンサルタント。広告代理店、不動産デベロッパーの支店長・不動産売買業務を経験後、業界初の個人向け不動産コンサルティングを行う、株式会社さくら事務所を設立。らくだ不動産株式会社の会長も務める。

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    大西 倫加,長嶋 修

    幻冬舎メディアコンサルティング

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