四谷さん(男性・50代※仮名)は、亡父が所有していた100坪の広大な実家を姉とともに相続することになりましたが、相続の方法をめぐって姉と意見が真っ向から対立してしまいました。相談を受けた不動産エージェントCは、姉にも会って真意を聞き出したうえで、解決策として、「土地の分割」を行ったうえで片方を売却して代金を姉の取り分とし、残りを四谷さんが取得して「賃貸併用住宅」を建てるという提案を行いました。

「資産が少ないから相続で揉める心配はない」は虚構

裁判所の司法統計によれば、令和2年度に遺産分割の争いになった遺産総額は、5,000万円以下が42.9%、1,000万円以下が34.7%です。これは、相続で揉めて裁判沙汰になっている案件のうちの実に4分の3が、5,000万円以下の資産規模ということを意味しています。

 

今回の相談事例では2億円という大きな資産でしたが、むしろこの規模で揉めるのは珍しいほうです。大きな資産をもっている家は早めに対策を講じていることがほとんどだからです。

 

自分はそんなに資産がないし、相続で揉めることはないだろうと当事者意識の薄い家庭ほど、相続で痛い目を見ることになります。相続したら売って均等に分けよう、収益物件にして収益を分け合おうとあらかじめ相続人たちの間で決めていたとしても、想定外のトラブルに直面することもあります。

 

たとえば、収益物件を建てようと画策していたところ、土地の状況を詳しく調べてみたら地下に水道管が通っていて大きな建物が建てられないという事実が発覚する、というように、「もっと早く知っておけば」と後悔するケースも珍しいことではありません。作戦変更するにも再度相続人たちが集まって議論する必要になり、意見を改めてまとめ上げるのに苦労することになります。

 

実は親は再婚で、前のパートナーとの間にも子どもがいた、といった希少なケースもあります。生前に親から直接聞くことができていればいくらでも対策できるのですが、事情があって打ち明けられないこともしばしばあり、これが原因で相続時に難題となって立ちはだかることになるのです。やはりもっと早く知っておければと後悔することになるパターンです。

 

相続で揉めないコツは、相続前の相続する側と相続させる側、双方がそろっているうちにきちんと話をつけておくことです。

 

関わる方たちの思いをすべて汲み取ることが相続の円満解決を導きます。相続が発生する前であれば、継ぐほうと継がせるほうそれぞれの本音が聞けるので、対策の選択肢もたくさん用意でき、より最適化された解決策を導くことができます。

 

また、相続発生前にじっくり準備を進められるのでもっと早く知っておけばという後悔を喫せずに済みます。

 

ときにはエージェントから、何もしないのがベストな相続対策だと提案することもあります。これは、保険会社や不動産関連会社への相談だと、なかなか出てこない結論です。相談者の悩みを解決する最善の方法は何かにとことんフォーカスするエージェントだからこそできる提案なのです。

 

たとえ資産が1,000万円以下のものであっても、後々のトラブルを回避するため、そしてそれぞれの思いを等しくするため、早めに相談すべきです。不動産エージェントであれば、各人の思いを把握しながら、持ち前の交渉力を駆使して、総合的に判断して関係者全員が幸せになれる解決策を提示できる可能性があります。

 

 

大西 倫加
さくら事務所 代表取締役社長
らくだ不動産株式会社 代表取締役社長
だいち災害リスク研究所 副所長

 

長嶋 修
さくら事務所 会長
らくだ不動産株式会社 会長

悩める売主を救う 不動産エージェントという選択

悩める売主を救う 不動産エージェントという選択

大西 倫加,長嶋 修

幻冬舎メディアコンサルティング

不動産売却を検討する人は必読の一冊! 後悔したくなければ「不動産エージェント」を選択せよ! 売主第一主義か?自社利益最優先か? 不動産業者は千差万別! 正しいパートナー選びが売却の成否を分ける――

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