不動産市況はいま空前の「売り手市場」となっています。ところが、不動産仲介業者の間では、売主の利益よりも自分の利益を優先する行為が横行しており、売主が納得いかない形での売却を迫られるケースがあとを絶ちません。そんななか、売主の利益を追求することだけに集中し、方法にこだわらず支援を行う「不動産エージェント」の存在が、これまでの「売主不在」の不動産業界を変えていく可能性があります。

AIが普及したら不動産業はどうなる?

「AIが普及したら奪われる仕事がある」とは業種業態問わずよく耳にする言葉です。不動産仲介業も例外ではなく、将来AIに奪われる仕事の一つと見なされています。

 

確かにAIが不動産売買の仲立ちをするエージェント「的」な役割を担うことは可能です。希望の条件を満たしている相手を探して取引できればそれでいいという極めて合理的で効率的なマッチングを望むのであれば、人間を間に挟まず機械だけに頼って取引したほうが、より利益を最大化することもできます。

 

実際にAIを利用した不動産取引も、まだまだ実験段階ではあるものの行われるようになっています。

 

しかし不動産売買というのは、予測できない事態が当たり前のように発生し、AI単独では処理できず取引がストップしてしまうこともあると考えられます。その予測できない事態は、人間同士の相性や感情、交流の経緯によって起こるものです。これら不確定要素を複合して予測不能の事態が起きると推測するには、やはり人間の視点、不動産のプロの視点は欠かせません。

 

例えば、AIは過去の取引事実の掘り起こしについては人間以上の情報量と信頼性をもっていますが、個人の判断基準についてはまだまだ分析しきれていない面があります。この判断基準というのは人によって非常に曖昧で、床の傷一つとっても大きな差が生じます。売主には気にならない程度の傷だったとしても、住んでから傷に気づいた買主から「こんなあからさまな傷があるのに告知しないなんて」と訴えられ、取引後のトラブルの種にもなり得るわけです。

 

こういった人間の感情や感覚に起因したトラブルを避けるためには、間に立つ人間による客観的な観察力と判断力が重要な鍵となります。「この傷は売主にとっては気にならなくても、買主には気になるかもしれない」と事前に気づくことができれば、告知事項としてあらかじめ伝えることで、トラブルを避けることができるからです。

 

不動産そのものに関するトラブルだけではありません。売却ストーリーのなかにも登場した相続問題のような、売主サイド各人の思いがばらばらになってしまっている事態というのも、AI単独では円満な売却へ導くことは困難です。

 

AIに「今回の問題は過去の事例から、このような解決法が望ましいです」と無機質に解決策を弾き出されても、感情が先行している当事者としては「機械に何が分かる」となって火に油を注ぐだけの事態にもなりかねません。特に、「相続問題」に紐づいた売却には、各人の譲れない気持ちを一つひとつ解いていかないといけません。

 

専門家チームと協力しながら各人の思いをまとめて、ベストな解決策を提示する不動産エージェントのサポートは欠かせないのです。

 

他にも例えば、離婚に伴う家の売却もAIでは最善策を提示するのは難しいです。

 

家は財産分与の対象となるので、離婚時は家の所有者名義に関係なく、夫婦それぞれが納得したかたちで分け合う必要があります。事情があって別れる夫婦なのですから、売却する場合はたいてい意見が衝突します。そして当事者同士では感情のぶつかり合いになってしまうため、必ず代理人の力が必要となるものです。

 

間に入ってそれぞれの思いを聞き出し、両者の意向をくんだ解決策をカスタマイズできる存在によって、騒動を収束させることができます。

 

不動産エージェントが大切にしている3つの要素、倫理性・専門性・個性のうち、倫理性と専門性についてはAIのほうが勝っている面が強く、私利私欲に走らず、なおかつインプットしている情報量がすさまじいという点では、人間よりも圧倒的に高いパフォーマンスを発揮できます。

 

しかし、関わる方たちの信頼関係を構築して円満な取引をするうえで重要となるのは相互の相性、個性に頼る部分が大きいです。この個性についてだけはまだまだ人間に軍配が上がります。

 

後腐れのない気持ちのいい取引をするには、個性を大切にしている不動産エージェントの力が必ず必要となってきます。AIで十分に対応できるところはAIに任せ、人間にしか判断できないところはとことん人間がやることでより後悔のない不動産売買取引が実現できるのです。

 

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悩める売主を救う 不動産エージェントという選択

悩める売主を救う 不動産エージェントという選択

大西 倫加,長嶋 修

幻冬舎メディアコンサルティング

不動産売却を検討する人は必読の一冊! 後悔したくなければ「不動産エージェント」を選択せよ! 売主第一主義か?自社利益最優先か? 不動産業者は千差万別! 正しいパートナー選びが売却の成否を分ける――

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