相続をめぐって兄弟姉妹が揉めるケースはあとを絶ちません。しかし、解決の糸口をつかめる可能性はあります。四谷さん(男性・50代※仮名)は、亡父が所有していた100坪の広大な実家を姉とともに相続することになりましたが、相続の方法をめぐって姉と意見が対立し、困り果ててしまいました。相談を受けた不動産エージェントCは、問題の本質が金額や遺産と別のところにあると直感し、まず姉に会って話を聞くことにしました。

客観的な立場で姉の「本音」を聞き出す

エージェントCの「会いたい」という要望に対して、姉の反応は芳しくありませんでした。相手方の不動産屋が会いに来るとなれば、「相手のいいように話を運ばれるのではないか」と警戒心を抱かれるのは無理のない話です。

 

代理人を立てて解決の道を探るのは、相続に限らず争議ではよくあることです。当事者同士が面と向かい合うと感情が先行し話が進展しないためです。しかし、話し合いの場すら設けられないようでは、前に進むことができません。姉の警戒心を解いてもらうことが第一の重要なステップとなります。

 

そのためにエージェントCがとった作戦は、とにかく「粘ること」でした。「あくまで自分は中間的な立場であり、偏ることはない」という姿勢を真正面から訴えかけることを心掛けたのです。

 

エージェントCが誠心誠意、思いを伝えること数回、ようやく直接会う機会を得ることが叶いました。そして、相続した不動産や弟に対する率直な気持ちを引き出すことができたのです。

 

姉にはどうしても我慢ならないことがありました。これまで、実家をリフォームする際や外壁などの手入れを行う際、姉が修繕の費用を肩代わりしていたのです。

 

いずれ返してもらう約束で費用を出したのに、父や弟からは音沙汰なく、一円も返されないままという状況でした。

 

この事実は、正式な取り交わしをしていたわけではないものの、四谷さんが姉から「借金」をしていたことを意味しています。姉としては自分が育ってきた実家だからとこれまで黙認をしてきましたが、今回の件で我慢の限界に達したといいます。

 

これまで固定資産税は親が支払い、四谷さんは住まいに関して一円も払ったことがなかったとのことでした。一方で修繕費用は姉が肩代わりしており、「弟がこれからも住み続けようとしているなんて納得できない」と不公平を訴えるのも当然の話でした。

 

借金の話が決着しない限り、姉の怒りは収まりません。相続云々よりも、まずはこの問題を解決する必要があります。

 

エージェントCが「不公平に感じて怒るのはもっともだ」と客観的な立場から所感を述べると、姉は、弟が親の面倒を見てもらっていたという感謝の気持ちもあることを明かしました。さらに、話をこじらせたい気なんて毛頭ないことや、これまでのことはこれまでのこととして、受け継ぐものを均等に分けて終わりにしたいということを話したのです。

 

後日、エージェントCは、四谷さんに姉との話し合いの内容を報告し、事実関係を確認しました。姉から借金していたことは事実で、しかも金額はかなり大きく、四谷さんの手持ちでは返すことのできない額でした。

 

「お金の貸し借りが解消されないまま、弟が実家の土地に住み続けるのは納得できない」という姉の本音を知った四谷さんも、自分の意見を無理やり通すことが困難であることを十分に理解したようでしたが、一方で土地を手放したくない気持ちは譲れない様子でもあります。

 

姉としては、相続資産をきっちり二分したい意向です。四谷さんにも姉にも譲れない部分があり、どちらも主張は正しいです。とにかくここは相続した資産をきっちり半分ずつにできる方法を探す必要があるとエージェントCは考えたのです。

専門家の協力で見極めるベストな土地の分け方

1ヵ月程度の期間を要しましたが、エージェントCは今回の相続問題に対処する最適な解決策を四谷さんに提案しました。それは、土地の分割を行い、片方は売却して姉の取り分とし、残りを四谷さんの分として賃貸併用住宅を建てるというものです。

 

四谷さんがエージェントCに対し「100坪のうち50坪を売却するのか」と尋ねると、エージェントCは首を横に振りました。そして、「土地を半分にすると望んでいる自宅部分の間取りと賃貸部分の収益、両方を確保できる物件を建てることができなくなってしまう」と説明したのです。また、時間を掛けて吟味したのが、四谷さんの理想の建物を建てるのに必要な敷地面積です。

 

まず、税理士やファイナンシャル・プランナーなど専門家の力を借りて、四谷さんにとって無理のない融資が組めて、なおかつ最大限の収益が見込め、節税にもつながる賃貸併用住宅の要件を洗い出しました。続いて、建築士の資格をもっているエージェントCがこの要件を満たす大まかな建物の設計を行い、逆算して必要な敷地を見積もりました。

 

これら叩き台の資料をハウスメーカーに持ち込み、より具体的な建物図面を固めていったのです。その結果、60坪の土地が必要であると算出できました。100坪のうち60坪ということは、売却分は40坪です。

 

四谷さんは「半分以下の敷地が1億円で売れるのか」と不安そうでしたが、土地全体のうち環境や立地的に優れている部分を切り取れば、50坪未満でも1億円の価値が見込めました。四谷さんが相続した土地は広大で、2億円の価値があるという概算でした。しかし、ちょうど真ん中で分割したところで、どちらもちょうど1億円ずつの価値があるわけではありません。大きな通りに近い側もあれば、閑静な住宅街に面している側もあります。そこで、周辺の実際の取引事例も参考にし、この地域で土地を購入する層が建てる家の規模なども詳しく調査したところ、価値の高い側の敷地40坪を売却すれば1億円に達する目処が立ったのです。

 

 

大西 倫加
さくら事務所 代表取締役社長
らくだ不動産株式会社 代表取締役社長
だいち災害リスク研究所 副所長

 

長嶋 修
さくら事務所 会長
らくだ不動産株式会社 会長

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