「両手取引」で2倍稼ぎたい不動産仲介業者
しかし、ここで一つの疑問が湧いてきます。不動産仲介会社は売買取引した不動産価格に応じた割合の手数料を受け取っているシステムのはずです。そうであれば販売を任された担当者にとっても値下げ交渉は歓迎できないし、できるだけ高値で売ろうと努力するのではないかということです。
残念ながらこのような想像は売主が抱く幻想です。不動産仲介会社にとって、売主からあずかった不動産をなるべく高く売ることは、必ずしも自社の利益につながるとは限らないのです。
売主は依頼した不動産仲介会社との間にある認識のずれや、利害関係の不一致を理解すべきです。すなわち不動産の売却というゴールは同じでも、取引成立までのプロセスやスピードにおいては、両者の見解に大きな差異があります。
ここからは売主と不動産仲介会社との間に起こっているこの認識のずれをより具体化するとともに、不動産業界に深く根付いてしまっている、売主の利益を無視した悪しき商慣習を明らかにしていきます。不動産取引の商慣習として問題視されているのが、「両手取引」が認められていることです。
「両手取引」とは、つまるところ売主と買主、双方の代理を同じ不動産仲介担当者が担う取引のことです。対して売主と買主それぞれに別の不動産仲介担当者がついて行われる取引は片手取引となります。
不動産仲介会社にとって両手取引は、一つの不動産で双方から仲介手数料を得られるという1粒で2度おいしい取引となっています。取引手数料を売買価格の3%と設定していたら、両手取引なら2倍の6%分を稼げるということです。取引の双方に同じ仲介者がつくことは民法では固く禁じられていますが、不動産取引においては特別法として許されています。
高く売りたい売主と安く買いたい買主の、両方のサポートにつけることを意味しているわけですが、どう考えても矛盾したルールだと感じます。どちらかの意向に偏ってしまうのは明確であり、ほとんどの仲介者は媒介契約を結んでいる売主の意向は優先度を落とし、買主に寄り添ってしまうのです。
業務上の効率という点でも、両手取引は不動産仲介会社にとってメリットがあります。仲介業のプロセスにおいては、売主や買主との話し合いの場のセッティングはもちろん、資料や契約書の作成など、さまざまな業務が発生します。
片手取引においても両手取引においても、その作業量に差はほとんどありません。両手取引であれば買主と売主同時に話し合いの場を設けて効率化することができますし、資料や売買契約書も同じものを使い回すことが可能なのです。
単に2倍稼げるだけでなく、コストやエネルギーも最小限の消耗で済ませられるのですから、不動産仲介会社は両手取引のうま味をみすみす逃すわけにはいきません。
なんとしても買主も自力で見つけ、両手取引を成し遂げたいのです。
大西 倫加
さくら事務所 代表取締役社長
らくだ不動産株式会社 代表取締役社長
だいち災害リスク研究所 副所長
長嶋 修
さくら事務所 会長
らくだ不動産株式会社 会長
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