(※画像はイメージです/PIXTA)

個人事業の「法人成り」をすすめるロジックとして、よく、個人よりも法人のほうが節税の手段の選択肢が多いということが指摘されます。本記事では、個人ではできない、法人ならではの方法で、会社の税負担を抑え、個人の手取りを増やせるとされる手段の一つ「役員社宅」について解説します。

役員社宅の賃料の相場

このように、役員社宅制度を利用すると、会社にとっては税負担の軽減、役員個人にとっては手取りの増加につながるという効果があります。

 

しかし、転貸料をあまりに低く設定しすぎると、税務当局の伝家の宝刀「同族会社の行為計算否認規定」(法人税法132条、所得税法157条)が発動する可能性があります。すなわち、賃料と転貸料の差額が役員個人の給与として課税される可能性があります。

 

そこで問題となるのが、転貸料をいくらに設定すればよいのかということです。

 

この点については、国税庁が基準を示しています(国税庁「タックスアンサーNo.2600 役員に社宅などを貸したとき」)

 

国税庁の基準は、役員社宅の床面積により、「小規模な住宅」と「それ以外の住宅」に分け、それぞれについて、役員が会社に支払う転貸料の計算方法を定めています。ただし、「豪華社宅」に該当する場合、転貸料は賃料全額となります。

 

◆小規模な住宅の場合

「小規模な住宅」の意味は、会社が役員に支払わせる転貸料相当額は、建物の法定耐用年数に応じて異なります。

 

・法定耐用年数30年以下:床面積132㎡以下

・法定耐用年数30年超:床面積99㎡以下

 

この要件に該当する場合、転貸料相当額は、次の(1)~(3)の合計額です。

 

(1)(その年度の建物の固定資産税の課税標準額)×0.2%

(2)12円×(その建物の総床面積(㎡)/(3.3㎡))

(3)(その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)×0.22%

 

◆小規模な住宅でない場合

次に「小規模な住宅」にあたらない場合は、会社が賃貸人に支払う賃料の50%の金額か、あるいは、以下の「(イ)(ロ)の合計額×12分の1」のいずれかになります。

 

(イ)(その年度の建物の固定資産税の課税標準額)×12%

(ロ)(その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)×6%

 

なお、補足すると、賃貸物件ではなく、会社所有の物件を役員個人に社宅として貸す場合は、賃料相当額は「(イ)(ロ)の合計額×12分の1」となります。

 

◆豪華社宅

「豪華社宅」に該当する場合、転貸料はその物件の「使用料相当額」となります。すなわち、役員は賃料全額を自己負担しなければなりません。役員社宅制度のメリットが一切享受できないということです。

 

「豪華社宅」にあたるか否かは、原則として、床面積が240㎡を超える場合に、取得価額、支払賃貸料の額、内外装の状況等から総合的に判断されます。ただし、床面積が240㎡以下であっても、一般的な住宅等に設置されていないプール等の豪華設備があるなどの場合、豪華社宅に該当することとなります。

 

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