成長の踊り場を「プラトー」と呼ぶ
【回答5】停滞期は熟成期なのです
今回は、始めに「プラトー」という上達に関わる性質について紹介したいと思います。勉強での成績やスポーツなどの技能でも、上達することが求められている分野に共通する性質です。
何事においても上達を目指すには、当然、たくさんの勉強や練習などの努力が必要になってきます。勉強すればする程、練習すればする程、それらに対する成果が比例して直線的に向上していけば理想的です。山田さんも同じようなイメージを持っていました。
しかし実際には、直線的に向上する形にはならず、必ず途中で停滞しているように見える時期というものが出てきます。このパターンには例外はなく、誰もが同じ道をたどります。その形をグラフに表すと次ページのようになります。
下図を見るとわかるとおり、最初はわりとスムーズに成果が上がるのですが、あるところにくると努力に対して成果が出ない平らな期間がやってきます。この平らな期間のことをプラトー(学習高原)とよぶのです。
初めは内容も基礎であったり簡単であったりするなどから、成果も急激に上がります。しかし、やがて内容が難しくなるなどから、同じような成長の形にはならず、プラトーを迎えます。そして、ある期間が過ぎるとプラトーを抜け出し、またレベルアップできるようになるのですが、またしばらくするとプラトーを迎えることになります。このように、成績の上がり方は必ず階段状になるのです。
もちろん、その分野の難易度や個人の能力の差によってグラフの上がり方やプラトーの幅は変わってきますが、階段の形状をとるのは共通です。プラトーの時期を勉強に限って分析してみると、知識は頭に入っているのだけれど、スムーズに取り出して使うことができないといった時期にあたります。つまり、こなれた知識になっていないため、成果が出にくいという時期なのです。
山田さんも、このプラトーの時期の最中だったというわけです。
プラトーに陥った当人からすると、まったく成長していない停滞期のように感じてしまいますが、一段上達するためには必ず必要な期間なのです。このプラトーの存在を知っているか知らないかの差は、とても大きいのではないでしょうか。特に独学している方は、もしかするとそこであきらめてしまったり、的外れな方向転換をしてしまったりする可能性だってありえます。
そしてこのプラトーは、心理学的には「レミニセンス現象」で説明できます。このレミニセンス現象を1人で自転車に乗れるようになるまでを例にして説明します。
皆さんは、補助輪なしで初めて自転車に乗れたのはいつでしょうか。覚えていないという方でも、あるとき急に乗れるようになったという記憶はお持ちではないでしょうか。たぶん、1人で乗れるようになるまでは、親に自転車の後ろを支えてもらいながら練習したと思います。
最初のうちは、手を離されたとたん倒れてばかりだったと思います。そんな状態を繰り返しているうちに、あるとき突然乗れるようになるというわけです。レミニセンス現象とは、まさにこの一連の経過のことなのです。
ひたすら勉強をしてもなかなか成果が上がらない状態が、先程のプラトーです。プラトーにはいつか終わりがきて、また成果が上がり出します。つまり、プラトーの平らな期間は、レミニセンス現象による成果発生までの時間差の期間だったというわけです。
プラトーは、脳にとって非常に重要な時期です。なぜなら、その期間中は脳の中で記憶を整理して使いやすい情報に形を整えている作業が行われているからです。この情報の熟成期間を経ることで、知識が単なる情報ではなく使える情報に生まれ変わるというわけです。
このことからも、勉強の王道はコツコツ型というのがよくわかると思います。短期集中型では、これらの性質の恩恵をあまり受けることができません。コツコツ継続した結果、爆発的に成果が現れるのです。
山田さんにも、今のプラトーの期間が大事であることを伝えました。
池田 義博
記憶力日本選手権大会最多優勝者(6回)
世界記憶力グランドマスター
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