(※写真はイメージです/PIXTA)

日本の食料自給率はどんどん低下していています。このような状況で、投機から身を守るために生産国が輸出禁止措置をとりだしたら、日本に食料は入ってこなくなります。それは石油などのエネルギーにしても同じです。ジャーナリストの田村秀男氏が著書『日本経済は再生できるか 「豊かな暮らし」を取り戻す最後の処方箋』(ワニブックスPLUS新書)で解説します。

日本の食料自給率は低下は致命的

■グローバリゼーションの問題

 

投機が起きるのは、モノやお金が国際的に動きまわるグローバリゼーションが高まっているからです。動きが活発になればなるほど、そこには思惑が働き、投機が起きます。それによって、多くの人たちにとってモノもカネも手の届かないところに行ってしまうことになります。

 

それを防ぐには、動きを止めるしかない。

 

2022年4月に、インドネシア政府はパーム油の国外への輸出を禁止する措置をとりました。

 

インドネシアではパーム油は食用油として広く利用されており、生活に欠かせない物資となっています。そのパーム油が健康増進に効果があるなどの理由で世界的に注目されました。

 

そのため輸出が急増して価格が高騰し、それに連動して国内の価格も高騰し、おまけに品薄の状態が続いたことが、インドネシア政府が輸出禁止措置に踏み切った理由でした。

 

しかし、この措置はパーム農家の大反発を受けることになりました。輸出したほうが儲けは大きくなるので、農家としては輸出のほうが得なのです。農家が大規模なデモを行う事態にまで発展したことで、インドネシア政府はわずか1ヶ月足らずで輸出禁止措置を解除しています。

 

しかし、インドネシア政府のような自国の産物と国民生活を守るために輸出禁止措置に踏み切る動きが完全になくなるとも思えません。投機は、モノとお金がグローバルに動き回るところに起きるわけで、それによる儲けが大きくなるとすれば、グローバリゼーションを高める動きが活発化することが想像できます。

 

グローバリゼーションの波に乗って、どんどん工業製品を輸出して儲け、それで食料もエネルギーも輸入すればいい、そういう考えになっているのが日本です。まさに日本は、「グローバリゼーション万歳」であるわけです。

 

ところが、グローバリゼーションで自由に輸出入ができる状態が未来永劫に続くとの考えは甘すぎることがわかってきました。

 

資源・食料問題研究所代表の柴田明夫氏は『日本経済新聞』(2022年6月9日付)のインタビューに答えて、「新型コロナウイルスの感染拡大からの経済回復で食料品の需要は高まっているが、サプライチェーン(供給網)の寸断が続き、調達が不安定になっている。そこにさらなるウクライナ危機という地政学リスクが加わった」と述べています。

 

新型コロナの影響で船などの運搬手段が稼動しなくなっているのに加えて、ウクライナ侵攻でウクライナからの輸出が困難な状況もあり、自由に調達できなくなっている。グローバリゼーションが成り立ちにくくなっているというわけです。

 

さらに柴田氏は、日本の農地が9割しか使われていないことも指摘しています。農地はあり余っているのに、それが活用されていないことで、食料自給率が上がらない。要するに日本の農業政策が貧困すぎるのです。

 

若い人が農業をやりたいと思っても、農地を簡単に手に入れられない。だからできない。定年後に農業を志す人がいても、それも簡単ではない。農業政策が貧困だから、農地はあるのに、そこで農業ができずに多くが休耕地のまま放っておかれているわけです。

 

同じことは、漁業についても言えます。漁業従事者を増やしたり、漁場を整備するなどの施策が充分にとられていません。そのため、日本国内の漁獲量は減りつづけています。それでも国産は人気があり高く売れるので、熊本産アサリと称して外国産を混入させるといった産地偽装問題がつぎつぎに明るみに出ています。本気で漁業を守り育てる姿勢が失われているのです。

 

そうしたなかで、日本の食料自給率はどんどん低下していっている。こんな状況で、投機から身を守るために生産国が輸出禁止措置をとりだしたら、日本に食料ははいってこなくなります。エネルギーにしても同じです。

 

モノがはいってこない危機に見舞われる可能性が日本は高い。物価高騰の真の意味を理解し、そこでの問題を本気で考えていかないと、日本は生き残れないところまで来ているのかもしれません。

 

田村 秀男
産経新聞特別記者、編集委員兼論説委員

 

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本連載は田村秀男氏の著書『日本経済は再生できるか 「豊かな暮らし」を取り戻す最後の処方箋』(ワニブックスPLUS新書)より一部を抜粋し、再編集したものです。

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