(※写真はイメージです/PIXTA)

コロナ禍で始まり、ウクライナ侵攻で加速した物価高騰に対抗するため、欧米では利上げを断行し、金融引き締めによって資金のダブつきを解消する政策を打ち出しました。資金のダブつきが解消されれば、物価高騰も落ち着いていきます。ジャーナリストの田村秀男氏が著書『日本経済は再生できるか 「豊かな暮らし」を取り戻す最後の処方箋』(ワニブックスPLUS新書)で解説します。

世界経済の動きを決める米国の金融政策

■カギを握るのは米国

 

世界の物価動向に大きな影響を与えているのは、中央銀行による資金発行や金利操作などの金融政策です。とくに世界の基軸通貨となっているドルを有する米国の金融政策は、世界中に大きな影響を与えます。

 

2008年9月に米国の有力投資銀行であるリーマンブラザーズが経営破綻、それをきっかけに世界的な株価下落・金融危機が発生し、世界規模での不況へとつながりました。リーマン・ショックです。

 

この影響で日本でも、当時1万2000円程度だった日経平均株価が、一時半分の6000円台に急落する大ダメージを受けました。雇用環境も悪化して、企業が新卒者に対する求人をいっせいに手控える状況となり、バブル経済が崩壊したときの「就職氷河期」の再来とまで言われるほどでした。

 

リーマン・ショックによる不況を克服するために、米国のFRBは、大規模な量的緩和策を導入していきます。2008年11月から2010年6月までの第一弾、2010年11月から2011年6月までの第二弾、さらに2012年9月から2013年12月までの第三弾と、3回にもわたる長期的な量的緩和でした。

 

これによりドル資金発行量、マネタリーベースは、3倍から4倍にもなっています。それほどの大規模な量的緩和を実施しなければならないほどの不況だったわけです。

 

米国の量的緩和の効果もあって、2014年秋くらいには不況も一段落し、国際商品の価格も上がらなくなり、物価も落ち着きをとり戻します。そして、やや下がり気味の傾向を見せていたときに、コロナ禍に対応するために金融緩和と量的緩和が行われ、そこでダブついた資金が国際商品市場に流れ込み、物価を押し上げてしまいました。

 

リーマン・ショックによる量的緩和を米国が中断したときに物価は落ち着き、コロナ禍で再び量的緩和が行われたことで穀物価格が高騰し、OPECプラスの減産をきっかけにして原油価格も高騰していきました。

 

この事実からわかることは、世界経済の動きに重要な役割を果たしているのが、米国の金融政策だということです。

 

■物価高騰に拍車をかけたウクライナ侵攻

 

物価高騰は、金融政策、とくに米国の金融政策による影響が大きい。物価は需要と供給の関係で語られることが多いのですが、じつは需要と供給の関係で語れない部分が多いのですが、そこには、投機が存在するからです。

 

相場の変動を利用して利益を得ることを目的にした取引が投機ですが、それは純粋な需給関係だけが反映されるものではありません。需要が急拡大するかもしれない、供給が逼迫るかもしれないといった〝思惑〞でも市場は大きく動きます。

 

そういう〝思惑〞〝マインド〞は経済学用語では「期待(expectation)」と呼ばれます。「期待」という日本語の語感には希望のニュアンスがふくまれているのですが、英語の「expectation」には将来予想の意味があります。実際にまとまった規模のカネは企業経営者、投資家や投機家の予想、即ち期待次第で動き回るのです。金融市場が高度に発達した現代経済は足下の現実ではなく、期待によって突き動かされているわけです。

 

投機といえば、一部の金持ちがやっている〝マネーゲーム〞だと捉える人も多いかもしれませんが、そこには想像以上に多くのプレーヤーが参加しています。

 

プレーヤーが少数なら、彼らの共通意識だけで市場を左右できるかもしれませんが、多くのプレーヤーが参加している投機では、どう動いていくのかを見極めることは難しい。そうした混沌としたなかで形成されるマインドに市場は引っ張られ、動いていきます。

 

しかも、そこで動く資金は巨額です。大きな資金が動くからこそ、市場がダイナミックに動いていくことになります。

 

次ページ欧米の利上げで物価高騰も落ち着いていく

本連載は田村秀男氏の著書『日本経済は再生できるか 「豊かな暮らし」を取り戻す最後の処方箋』(ワニブックスPLUS新書)より一部を抜粋し、再編集したものです。

日本経済は再生できるか

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田村 秀男

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