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政治もマスメディアも物価上昇に超敏感
■日本はデフレ慣れなのか
2012年9月26日の自民党総裁選で、安倍晋三氏が石破茂氏を決選投票で破って当選しました。その自民党総裁選の数ヶ月前、石破氏と新橋の飲み屋の片隅で話をしたことがあります。
そのとき私は石破氏に、「本気で自民党総裁になる気なら、デフレからの脱却を考えなければダメです」と話しました。すると彼はいつもの真剣なまなざしで、「物価が上がったら選挙はマズいんですよ。家計を切り盛りする主婦たちは大反対ですから」と答えました。有権者相手の政治家の方々に共通する考えです。
筆者はそこで、「日本でのデフレの最大の問題は物価下落以上の幅で賃金が下がることです。デフレから脱すれば賃金が上がります。物価上昇に合わせて給料も上がれば不満はでないし、選挙でも不利になりません。政治家は景気を良くして賃金が上がりやすい環境をつくるべきです」と申し上げたわけです。
ただ、物価は政治の責任だけれど、賃金は経営者の裁量次第であって政治家は口出しができないということかもしれません。たしかに、政治家が経営者に向かって、「物価が上がったのだから、賃金も上げろ」とは言えないかもしれません。「責任転嫁か」と言われかねません。
マスメディアも、物価上昇には敏感です。2022年のコストプッシュ・インフレでは新聞もテレビも大騒ぎしています。しかし物価上昇に合わせて賃金も上げろ、という主張は少ない。ほんとうは物価が上がっても、それを上回るくらい賃金が上昇すれば大騒ぎする必要はないはずです。そういう意識をマスメディアがもてないことも問題だと思います。
政治もマスメディアも、デフレ慣れしてしまっているのか、物価が上がることにだけ敏感です。これには驚いてしまいます。
賃金が上がるということは、需要のパイが大きくなるということです。それまで買えなかったものも買えるようになるし、買いたいという欲求も生まれるはずです。企業の売上も収益も増えます。
事業が拡大すれば人手が必要になるので、雇用も増えます。より質の高い従業員を雇うためには、高い賃金を提示する必要があります。さらなる賃上げは、さらなる需要を生み、企業の業績拡大につながっていきます。そのサイクルが続くのが、経済成長です。
大企業も中小企業も、零細企業であっても必要なことは、一年後、二年後といった先を読む力です。ところがデフレ日本の経営者は、不安しかもてなくなってしまっています。好調なときであっても、すぐに不調のことを考えてしまう。
そして、投資を増やすどころか、支出を抑えることばかりを優先します。人件費を抑えるために、非正規を増やす。それでも高いというので、外国人の研修生を雇い入れたりもします。
これでは需要のパイは大きくなっていきません。デフレから脱することはできません。
政治家も、賃上げは経営者の問題という発想を捨てる必要があります。賃上げにおいて、じつは政治の役割は大きいのです。
最低賃金の引き上げは、まさに政治の範疇です。政治的に思い切った引き上げを実行すれば、ほかの賃金も引っ張られて上がります。現在のように低賃金から抜け出せず、デフレが続く状況では、政治による最低賃金の引き上げは、ぜひやるべきです。
2022年8月1日、厚生労働省の中央最低賃金審議会の小委員会は、最低賃金(時給)を全国加重平均で31円(3.3パーセント)引き上げて961円とする目安をまとめています。引き上げたことは評価できますが、まだまだ引き上げ額が小さすぎます。もっと思い切った引き上げが必要です。
介護職員の賃金については、2022年2月から「介護職員処遇改善支援補助金」が始まり、介護職員の月額給与が平均9000円アップされることになりました。介護職は重労働であり、何より社会に貢献しているにもかかわらず、低賃金が定着してしまっています。
厚生労働省の「介護従事者待遇状況等調査結果」によれば、2020年2月時点の介護職員の平均給与は常勤で月31万5850円と決して高くありません。非常勤になると、月11万2500円にすぎません。しかも雇う側は、人件費を減らすために非常勤を増やす傾向にあります。
こんな状況で9000円アップは、焼け石に水でしかありません。もっと増やすべきだし、それは政治の役割です。そうしないと、高齢化社会を支えていく、介護に携わる人材が集まりません。
政治が賃金で介入できるところから賃金を上げていくべきです。賃上げムードが高まれば、全体の賃金が上がっていきます。賃金が上がれば、デフレから脱出し、経済の成長につながっていきます。