(※写真はイメージです/PIXTA)

ウクライナへの侵攻を開始したロシアに対して、西側諸国は即座に輸出入制限などの経済制裁を実施しました。しかし、天然ガスの供給をロシアに依存しているという致命的な弱点を欧州は克服できそうにありません。ジャーナリストの田村秀男氏が著書『日本経済は再生できるか 「豊かな暮らし」を取り戻す最後の処方箋』(ワニブックスPLUS新書)で解説します。

ヨーロッパはエネルギーをロシアに依存

■ロシア制裁の世界経済への影響

 

話をウクライナ侵攻に戻して、ロシアに対する制裁の意味と効果を考えてみたいと思います。

 

2022年2月24日にウクライナへの侵攻を開始したロシアに対して、西側諸国は即座に輸出入制限などの経済制裁を実施していきます。2022年3月8日には、米国のジョー・バイデン大統領がロシア産の原油や天然ガス、石炭などの輸入を禁止すると発表しました。さらに5月4日には、EUのウァズラ・フォン・デア・ライエン欧州委員長がロシア産原油の輸入を年内に停止すると発表しています。

 

西側諸国による経済制裁の目的は、ロシアがドルを使えないようにしてロシアの通貨であるルーブルを暴落させることにありました。ロシアの外貨獲得の大半は天然ガス、原油、石炭といったエネルギー関連の輸出によるもので、国家収入の半分がエネルギー関連で賄われているからです。

 

これに対抗してロシアは、ドイツ向けの天然ガスの供給量を6割削減すると6月に発表しました。パイプラインを経由してロシア産の天然ガスの供給を受け、エネルギーのロシア依存を強めてきたドイツにとって、かなりの痛手であることは間違いありません。ドイツだけでなくロシアからの天然ガス供給を受けているイタリアなどのヨーロッパ諸国も削減幅はあるものの、同様の報復措置を受けています。

 

天然ガスの不足は冬場の暖房燃料に困ることにつながりますから、ロシアの報復措置が続けば、ヨーロッパ各国は厳しい状況になるはずです。

 

米国はロシアから輸入している原油の量が少ないので、すぐに輸入禁止措置をとることができました。しかしヨーロッパ各国は依存度が高いので、すぐには禁止できない。だから、「年内に」と欧州委員長も発言しているわけです。そこに、ヨーロッパがエネルギーをロシアに依存している深刻さが表れています。

 

EUで厳しく規制すれば、原油の輸入は禁止できるかもしれません。しかし、天然ガスの輸入を禁止するのは難しい。不可能だと思います。不足分をロシア以外から輸入するとなると、液化天然ガス(LNG)に加工して船で運ばなくてはなりませんが、パイプラインの天然ガスでの輸送に比べてコストが2倍から3倍になってしまいます。

 

しかもLNGの価格は、直接供給する天然ガスに比べて、加工や輸送で、採取したときと売り渡されるときで大きな差が生まれます。相場が高いときに採取された天然ガスは、相場が下がっていても高く売るしかありません。そのときの相場が反映されるパイプラインで供給される天然ガスに比べて、ひどいときには10倍にも跳ね上がる可能性すらあります。

 

供給する側にしても、増産するには設備増強が必要になります。かなりのコストをかけて増産体制を整えても、ウクライナ戦争が落ち着いて、仮にロシアからの天然ガスの供給が再開されれば、投資はムダになります。リスクが高いわけで、そう簡単に決断することはできません。

 

ウクライナ侵攻に対する経済制裁として、多くの国がロシアからの輸入を禁じています。とはいえ、もともと輸出できるような工業製品の少ないのがロシアですから、その輸出がストップしたからといって大きな影響を受けるわけではありません。

 

ただし天然ガスをはじめとするエネルギーは、ロシアの主要な輸出産物であり、貴重な外貨獲得の手段です。経済制裁の報復措置とはいえ、その輸出を自ら削減することは、自分で自分の首を絞めるようなものですから、長続きするとは思えません。

 

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本連載は田村秀男氏の著書『日本経済は再生できるか 「豊かな暮らし」を取り戻す最後の処方箋』(ワニブックスPLUS新書)より一部を抜粋し、再編集したものです。

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田村 秀男

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