志望度は高めるもので評価するものではない
■「志望度」は採用側が高めるもの
人手不足の採用難時代にある日本で、未だに自社への志望度を評価基準としている人事担当者がいるようですが、特別な理由がない限り、それはもうかなりの時代遅れの考え方です。最大の理由は、単純ですが、候補者が大量にエントリーできる現代の採用市場において、相対的に一社あたりへの志望度が分散しているのは当然の成り行きだからです。
特に引く手数多の優秀な人材は、いろんなところから「是非うちに」と言われるので、「この会社でなければならない」という気持ちがなくなるのは無理もありません。だからといって、志望度が高くない人を落としていては、会社に必要な人材を確保するのが難しくなるでしょう。
もっと言えば、特に選考の初期段階において、そもそも候補者は「志望」などしていない場合がほとんどです。「ちょっと気になったから」「誰かに勧められたから」受けに来たに過ぎません。もちろん、全く興味がなければ面接も受けないでしょうから、関心があるのは確かです。ただ、自社を「志し、望む」ほどの気持ちが固まっているとは言い難い。
そこで面接担当者が「なぜ、うちを志望?」と聞いても、オトナな候補者は「いや、まだそんなに志望してないんだけど」と心の中で思いながら、とってつけたように会社のことを褒めてくれるかもしれません。しかし、それを聞いて悦に入る面接担当者や会社は、率直に言えばやや滑稽に映ります。
ともかく、これでは採用ブランド以上の人は採れません。自社の採用ブランドでホイホイ来る「ファン」だけを相手にしていては、優秀な人材を逃すことになります。繰り返しますが、優秀な人材には自社以外にもたくさんの魅力的な求人が来ていて、各社に対する志望度は相対的に下がっています。だから志望度を評価基準に使っていては、優秀な人材を落とすだけです。
採用ブランドは会社の成長から少し遅れ、会社が認知されていく中で徐々に伸びるものです。よって、採用ブランドに頼った採用活動では、今のブランド力より少しレベルの高い、将来的にいて欲しい候補者は採れません。ファンレベル以上の人材を採るためにも、「志望度は高めるべきものであって評価するものではない」と採用担当者は心得るべきです。
面接を通じて会社の魅力を伝える、志望動機を共に考えるなどして候補者の志望度を高めていくことで、自社の採用ブランドのレベルでは簡単に来てくれない優秀な人材が採れるというもの。採用担当者の介在価値はそこにあるのです。
・現代において、優秀な人材の一社あたりの志望度が下がるのは当然。
・志望度は高めるものであって評価するものではない。
・自社の採用ブランドのレベルでは簡単に来てくれない、優秀な人材の志望度を高めることが、採用担当者の介在価値。
曽和 利光
株式会社人材研究所 代表取締役社長