障害者雇用の義務が「DX推進」の妨げになっている⁉
障害者雇用促進法(障害者の雇用の促進等に関する法律)によって、一定数の従業員を雇用している企業は、国が定める障害者雇用率を超えて障害者を雇用する義務があります。2021年3月以降の法定雇用率は2.3%。従業員が43.5人以上の場合、障害者を1人以上雇用する義務があるのです。
法定雇用率を達成している企業には給付金が支給され、達成できていない企業には納付金の徴収が行われます。納付金の対象となるのは、常時雇用の従業員が100人を超える企業。100人未満であれば、未達でも納付金の徴収は行われません。ちなみに2021年度、法定雇用率を達成した企業の割合は47.0%でした。
障害者雇用の対象は、発達障害者も含まれます。厚生労働省『平成30年度障害者雇用実態調査』によると、調査回答のあった従業員規模5人以上の事業所で雇用されている障害者数は82万1,000人。身体障害者が42万3,000人、知的障害者が18万9,000人、精神障害者が20万人、発達障害者が3万9,000人。精神障害者保健福祉手帳により発達障害者であることを確認している人が68.9%、精神科医の診断により確認している人が4.1%でした。
雇用形態をみると、身体障害者は52.5%、知的障害者は19.8%、精神障害者は25.5%、発達障害者は22.7%が正社員。職業では、身体障害者は事務的職業が最も多く32.7%、知的障害者は生産工程の職業が最も多く37.8%、精神障害者はサービスの職業が最も多く30.6%、発達障害者は販売の職業が最も多く39.1%となっています。
また企業が障害者を雇用する際の課題として、すべての障害で「会社内に適当な仕事があるか」が最も多く、身体障害者では71.3%、知的障害者では74.4%、精神障害者では70.2%、発達障害者では75.3%となっています。
障害者雇用の義務違反で、企業が恐れるのは、何よりも会社名の公表。そのため「障害者ができる仕事」を確保するために、本来であればデジタル化を進め効率化できる業務を、障害者雇用を理由にそのまま残すケースが多くみられます。DX推進は、いまや企業の成長にとって不可欠とされているに関わらず、障害者雇用が足かせとなっているという、本末転倒な事態は否定できません。
DX推進により、障害者にとってもより働きやすい環境に変えられる可能性があります。DXにより障害者と健常者の区分をなくす……これからの時代、企業が実現させるべき姿といえるのではないでしょうか。