税務調査で質問応答記録書への署名を強要!違法性を訴えることは可能?【弁護士が解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

「売上の管理が適切にできていなかった」「後から無申告であることに気づいた」等の理由で、事業者に対し税務調査が行われることがあります。その際に質問応答記録書への署名を求められた場合、同意の証拠として重加算税の賦課に踏み切られてしまうケースもあるため、署名すべきかどうかは重要なポイントとなります。そこで実際にココナラ法律相談のオンライン無料法律相談サービス「法律Q&A」によせられた質問をもとに、税務調査について野﨑洋平弁護士に解説していただきました。

 

国税調査官から質問応答記録書への署名を強要され…

相談者のSさん(仮名)は、現在無申告による税務調査を受けています。その際、国税調査官から「帳簿を故意に消した」「税金を支払いたくないので、申告しなかった」などの質問応答記録書に署名するよう、強要されました。

 

そして「署名しないのであれば経費を一切認めず、500万円以上本税の額が上がる。もし認めるのなら500万円本税を下げるので、重加算税がプラスされても結果的に納税額が下がる」と言われました。

 

Sさんは実際にやっていない事や、思ってもいなかった事について署名をしたくないと、4時間近く粘りましたが、押し切られて署名してしまいました。

 

この件について国税調査官の対応に疑問を抱いたSさんは、ココナラ法律相談「法律Q&A」に次の2点について相談しました。

 

  1. 事実とは違う質問応答記録書に署名しないなら、経費を認めないという国税調査官の主張は許されるものなのか。
  2. もし上記が問題であれば、国に訴えていく事は可能なのか。(この件に関する会話の録音データはあります)

税務調査の心得は、申告・署名「しない」こと

1.の質問について、結論からすると、調査官の主張は、重加算税を課すべき事実がないにもかかわらず重加算税を課そうとしている点、実際に支出した経費を控除せず、事実と異なる税額で課税をしようとしている点で、いずれも違法であるといえ、許されるものではないでしょう。

 

ここでは、税務調査において、調査官から、最終的な納税額と引き換えに事実とは異なることを認めるように迫られた場合、どのような点に注意すればよいか説明します。

 

  • 所得税や法人税等の国税は申告納税であること

 

本件では、質問者のSさんは無申告で調査を受け、調査官から経費を認めないと主張されています(国税において、経費を認めないと主張することを、「経費を否認する」などといいますので、今後は「否認」という言葉を使って説明します)。

 

この点、所得税や法人税等の国税においては申告納税制度が採用されており、自身で税額を計算し税務署に申告をするまでは税金を納める義務は確定しませんから、原則として申告をするまで税金を納める必要はなく、税金未納による差押え等を受けるおそれもありません(ただし、会社から貰う給料等、事前に源泉徴収されているものはこれとは異なります)。

 

なお、申告納税制度の対になる概念として賦課課税制度というものが存在します。賦課課徴収制度においては、国や地方公共団体が一方的に納税者の税額を決定し納税義務を確定させるものであり、固定資産税や自動車税など地方税に多く見られます。

 

そして、仮に無申告であったとしても、申告納税制度を採用する税金においては、自身で税額を申告し納税することが原則ですから、直ちに国が税額を決定することはありません。

 

申告納税制度の税金において、国が一方的に納税義務を課すには、税務調査が行われ、調査の結果(具体的な税額と計算の根拠)が納税者に示され、調査結果に基づいて納税者に修正申告(申告をしている場合)もしくは期限後申告(無申告の場合)をするように納税者に促しても、納税者が調査結果に納得せず自身で修正申告もしくは期限後申告をしない時に、国が「更正」または「決定」という一連の手続きを経ることが必要となります。

 

本件における調査官の主張である経費の否認は、税務調査段階であることから、いくら調査官が経費を否認するといっても、Sさんの納税義務は何ら確定していないといえます。

 

したがって、経費を証明する明確な証拠等があるのであれば、Sさんは調査官に対して、経費を控除しないで期限後申告をすることは事実に反するのでできない、と回答するべきでしょう。

 

もちろん、その後もSさんが経費を控除しない申告を拒み続ければ、国はSさんに対して「決定」の手続きを経て、経費を控除しない税額で納税義務を課すことが考えられなくはありません。

 

しかし、経費を証明する明確な証拠があれば、そのような「決定」は裁判で取消しを求めることができますし、調査官もそのような証拠の存在を認識しながら「決定」を行う可能性は低いと考えられるでしょう。

 

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    東京弁護士会・東京税理士会神田支部所属。税務調査、審査請求、税務訴訟、脱税事件、税賠事件など税務に関する分野と、破産、再生などの倒産分野を専門的に扱っている。諸々の税目の税務調査において、課税庁と争いとなった事案で、課税なしの調査結果を複数件獲得している。税理士の先生からの相談も数多あり。都内だけでなく、全国からの相談・依頼も多く、遠方であってもできる限り迅速に対応するように心がけている。

    〈ココナラ法律相談の掲載ページ〉

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