医療の現場でも人為的なミスによる「医療事故」は多く発生しています。「あってはならないことですが、これは医療ミスでは?」と思ったとき、私たちはどんな対応をとればよいのでしょうか。そこで実際にココナラ法律相談のオンライン無料法律相談サービス「法律Q&A」によせられた質問をもとに、稲森幸一弁護士に解説していただきました。

病院代表に否定されたが、賠償請求できるのか?

相談者のヒーローさん(女性・仮名)は、「変形性股関節症」と診断され手術をしました。しかし、術後にひどい腰痛に襲われ、再度手術することに。

 

この時点で2回脱臼しており、「もし後方脱臼だったら追加の手術はしない」と医師に伝えていましたが、その後も3回目の手術は実施され、相談者の同意もなく腸腰筋まで切られてしまったそうです。

 

3回目の手術から1年半後、執刀医に改めて問い正すと「そもそも変形性股関節症ではなく、関節唇の出来物だけが悪かった」と誤診を認めるような発言をされました。しかし、病院の代表は「執刀医はきちんと説明義務を果たした」と主張しています。

 

そこでヒーローさんは、ココナラ法律相談「法律Q&A」に次の2点について相談しました。

 

(1)病院側が誤診だったと立証することは可能なのか。

(2)医療過誤を立証できた場合、損害賠償請求できるのか。また請求できる場合、どのくらい請求可能なのか。

医療過誤の有無に関わる2つの争点

医療過誤は特に事案の詳細を聞かないと確かなことは言えませんので一般論になりますが、この事例で問題になる点をまず説明させていただきます。

 

本件では医療過誤の有無が問題となる争点として、以下の2点が問題になり得ます。

 

  • 変形性股関節症ではないのにそう判断したという診断ミス
  • 相談者の同意なく腸腰筋を切除されたという説明義務違反

 

質問の(1)についてですが、可能かどうかはやってみなければ分かりませんので、一般的にどのようにして医療過誤を立証していくかについて説明させていただきます。

 

診断ミスの判断は「医療水準」が基準となる

まず、診断ミスについてです。この点については、医療水準が問題となります。

 

最高裁(昭和57年3月30日判決)が、医療機関・医師の注意義務の基準となるべきものは、診療当時のいわゆる臨床医学の実践における医療水準であると判示しています。簡単にいえば、通常の医師であればそのような判断や施術はしないであろうと言えるかどうかが問題になります。

 

本件でいえば、通常の医師であればそのような診断ミスはしないであろうということが言えれば、医療機関・医師に過失があったと言えるということです。

 

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