(画像はイメージです/PIXTA)

遺言書で「1人の相続人に全ての財産を相続させる」という内容が残されていた場合、その他の相続人はとても納得できません。しかしその場合でも法的には認められるため、もし不服がある場合は、遺留分を請求するなどの手続きを進める必要があります。そこで実際にココナラ法律相談のオンライン無料法律相談サービス「法律Q&A」によせられた質問をもとに、遺留分侵害額請求について森亮人弁護士に解説していただきました。

 

相続財産6,000万円が全て兄に!遺留分を請求したい

相談者のMさんは、父親が先日他界し、税理士から遺言執行を知らせる文書、遺言公正証書の写し、相続税がかかる財産の明細書を受け取りました。

 

相続人は父親と別居中の兄とMさんの2人ですが、遺言書には一切の財産を兄に相続させるとありました。財産は不動産が2,000万円ほど、預貯金は4,000万円ほどあります。

 

Mさんとしては、高校卒業と同時に家を出た兄よりも、結婚する40歳まで両親と同居し、長年面倒を見てきたMさんの相続金額が一切ないことが納得いかないようです。

 

Mさんは遺留分侵害額請求を検討していますが、具体的にどのように進めたら良いのかがわからず、ココナラ法律相談「法律Q&A」に相談しました。

 

Mさんが遺留分を受け取るためには、どのような手順で手続きを進めるのがよいのでしょうか。

今すぐ遺留分侵害額請求の意思表示を内容証明郵便で!

遺留分侵害額請求を兄に対して行い、適切な金額の支払いを受けて解決を図るための方法として、次の3つがあり得ます。

 

  1. 当事者間で直接話し合いする
  2. 家庭裁判所で調停を行う
  3. 地方裁判所(または簡易裁判所)で民事訴訟を提起する

 

しかしながら、最初の選択でいきなり3.をとることは原則的にできません。

 

ある一定種類の訴訟は、先に調停を経ていなければ提起することができないというルールが存在し(これを「調停前置主義」といいます。)、遺留分侵害をめぐる紛争はこのルールが適用されるからです。

 

1.と2.はどちらを選択することも可能です。

 

ただしいずれを選択するにせよ、まず真っ先にやっておくべきことは、兄に対して「遺留分侵害額請求を行う旨の意思表示」を記載した文書を、内容証明郵便で送付しておくことです。

 

これは、遺留分侵害額請求権は「相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から1年間」経過したら時効により消滅してしまうので、後になって兄から「消滅時効が既に完成しているので、Mさんにお金を支払う義務は存在しない。」などと拒絶される可能性を回避しておくためです。

 

内容証明郵便を用いるという点は、必ずそうしなければならないというルールがあるわけではないですが、普通郵便で送っただけでは「そんな郵便はこちらに届いていない。」と言われたりして、本当に遺留分侵害額請求の意思表示をしていたか否かの立証が後で不可能になるおそれがあるので、内容証明郵便を用いることが一般的です。

 

また2.を選択する場合、家庭裁判所へ調停を申し立てるための必要書類を提出する必要がありますが、調停を申し立てた=兄に対して遺留分侵害額請求の意思表示をした、という意味にはなりませんので、そこも注意が必要です。

 

1.または2.であれば、弁護士に依頼をしなくとも、ご本人が自分で動く形で進めることは可能だと思いますが、個々の事案で遺留分侵害額として実際に請求できる金額はいくらなのか? という計算は、民法の条文を正確に理解して算出する必要があります。

 

この部分は一般の方にとってはハードルが高い作業ではないかと思われますので、先に弁護士に相談をしておくことをお勧めいたします。

 

次ページ具体的な遺留分侵害額はいくらになるのか?

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