支持率低迷のゼレンスキー…「元コメディアン」を大統領に選んだウクライナ国民の後悔

支持率低迷のゼレンスキー…「元コメディアン」を大統領に選んだウクライナ国民の後悔

2015年、ドラマで大統領役を演じて人気を博した当時コメディアンのゼレンスキーは、勢いそのままに2019年の大統領選に出馬し当選。当時の支持率は73%を超える人気でした。その後、さまざまな問題で支持率を失ったゼレンスキー。大統領となった彼にいったいなにがあったのか、彼を大統領に選んだウクライナ国民の心境とは……元外交官で作家の佐藤優氏が解説します。

自爆型ドローンでロシアを煽ったウクライナの責任

民主的な制度がまだ十分でないウクライナでは、テレビの影響がとても強い。なにしろゼレンスキーは元コメディアンだから、ユーモアのセンスもあるし、どのようにパフォーマンスすれば自分がより画面映えするか熟知している。未来の理想像を、ビジュアルな形で国民に示す彼の戦略は当たった。

 

「この人が大統領になれば、国が一挙に変わる」

 

7割以上の国民が本気でそう信じた。

 

ところが、あっという間にゼレンスキーの支持率は40%まで下がる。戦争が始まったときには、20%台にまで支持率はガタ落ちしていた。

 

親ロシア派武装勢力は、ウクライナ東部のドネツク州やルハンスク州を実効支配し続けている。ミンスク合意は破綻したまま、ロシアとの和平はいっこうに実現しない。

 

2021年10月には、ゼレンスキーが海外のタックスヘイブン(租税回避地)に資産を隠していた事実が明らかになった。「これではポロシェンコ大統領の時代と、政権の腐敗は変わらないではないか」「政権が腐敗したままなのだから、道理で国内経済なんて改善しないわけだ」。国民はソッポを向き、ゼレンスキーの支持率はみるみるうちに落ちていった。

 

危機感に駆られたゼレンスキー政権は、21年10月以降ナショナリズムに訴えて国をまとめようとし始める。ドネツク州やルハンスク州、クリミアから親ロシア派武装勢力を追い出し、ウクライナの実効支配を貫徹しようと考えたのだ。

 

21年10月、ウクライナ軍は自爆型ドローン(無人攻撃機)「バイラクタルTB2」を使って親ロシア派武装勢力への攻撃を開始した。この行為はロシアを非常に強く刺激した。

 

自爆型ドローンによる攻撃が、軍部だけをピンポイントで傷つけるとは限らない。ドローンの攻撃によって、無辜の民間人が巻きこまれて犠牲になる可能性がある。ウクライナが自爆型ドローンを使用したことが明らかになると、ヨーロッパ諸国が非難声明を出した。

 

次ページゼレンスキーの思惑はうまくいくのか…

※本記事は、佐藤優氏の著書『プーチンの野望』(潮新書)から一部を抜粋し、GGO編集部にて再編集したものです。

プーチンの野望

プーチンの野望

佐藤 優

潮出版社

ロシアとウクライナの歴史、宗教、地政学、さらには外務官僚時代、若き日のプーチンに出会った著者だからこそ論及できるプーチンの内在的論理から、ウクライナ戦争勃発の理由を読み解き、停戦への道筋を示す。 〈戦争の興奮…

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