(※画像はイメージです/PIXTA)

24年ぶりの円買い介入後、足元膠着状態となっている米ドル/円相場。しかし、マネックス証券・チーフFXコンサルタントの吉田恒氏は「現在の膠着相場が続くかどうかは、今週が分岐点」といいます。それはなぜなのか……また、膠着相場の終焉により1998年8月以来となる「1ドル147.6円」を上抜けるかのうせいについて、吉田氏が考察します。

CPI発表で「大相場」となるか

ただ、現在の「介入後の膠着相場」は分岐点を迎えそうです。今週は、市場関係者の注目度が高い「米国の物価統計」の発表があります。なかでも、13日にはCPI(消費者物価指数)発表が予定されていますが、CPI発表後は過去2ヵ月連続で、発表後一気に約3円も米ドル/円が動きました。その意味では、膠着相場に終止符を打つ可能性は十分あるでしょう。

 

過去2回のCPI相場について、少し詳しく振り返ってみましょう。まず8月10日に発表された7月CPIが予想を下回ると135円程度から132円へ米ドル急落となりました。そして9月13日に発表された8月CPIが予想を上回ると、今度は142円程度から145円突破寸前まで米ドル急騰となりました。

 

このように、CPIの前年比上昇率が事前予想を下回ると米ドル売り、逆に事前予想を上回ると米ドル買いで反応し、一気に3円程度も相場が動くというのは、全盛期の米雇用統計発表後の相場展開を彷彿とさせるものでした。

 

ちなみに、今回の予想は12日のPPI(生産者物価指数)の前年比上昇率が8.4%(前回実績8.7%)、そして13日のCPIは同8.1%(同8.3%)といった具合にともに前回より上昇率が縮小、インフレの是正が緩やかに進むといった見方が基本になっているようです。

 

その上で、過去2回のCPI相場を参考にすると、あくまで事前予想コンセンサスを基準として、結果がそれを上回ったら瞬間的には米ドル買い、逆に下回ったら米ドル売りといった初期反応になる可能性はあるでしょう。

 

ただ、9月FOMC(米連邦公開市場委員会)などを通じ、米金融当局のインフレ是正への強い決意が確認されてきたことから、米ドル売りに反応するのは、事前予想コンセサンスを結果が大きく下回るといった「ネガティブ・サプライズ」の場合に限られる可能性はありそうです。

 

一方で、インフレ是正が鈍いことを示す結果となった場合は米ドル買いで反応しそうですが、前回のCPI相場までと異なるのは、日本の通貨当局による米ドル売り・円買い介入の可能性があるということです。

 

相関性の高い米2年債利回りとの関係を参考にすると、すでに米ドル/円は1998年8月の米ドル高値である147.6円程度前後まで上昇する可能性があります(図表2参照)。

 

出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成
[図表2]米ドル/円と米2年債利回り(2022年3月~) 出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

 

12、13日の米PPI、CPI発表を受けて、米ドルがそんな1998年の高値を一気に更新するようなら、改めて米ドル売り・円買い介入との攻防劇が展開する可能性はあるのではないでしょうか。

 

それにしても、最近の政府および通貨当局関係者の発言を参考にすると、今回の為替介入は急過ぎる相場の動きをけん制することを目的としたもので、特定の水準への誘導を目指すものではなさそうです。

 

そもそも、インバウンド拡大においては、円安を活用するとの考え方もあるようですから、為替介入により米ドル安・円高方向へ大きく戻す動きになる可能性は低そうです。

 

以上を踏まえると、今週の米ドル/円は143~148円中心での展開を想定したいと思います。

 

 

吉田 恒

マネックス証券

チーフ・FXコンサルタント兼マネックス・ユニバーシティFX学長

 

※本連載に記載された情報に関しては万全を期していますが、内容を保証するものではありません。また、本連載の内容は筆者の個人的な見解を示したものであり、筆者が所属する機関、組織、グループ等の意見を反映したものではありません。本連載の情報を利用した結果による損害、損失についても、筆者ならびに本連載制作関係者は一切の責任を負いません。投資の判断はご自身の責任でお願いいたします。

 

 

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