(画像はイメージです/PIXTA)

建物は築年数がある程度経過すれば自然と寿命を迎えるため、老朽化による建て替えは避けて通れません。そこで賃貸アパート・マンションが老朽化したとき、オーナーや入居者がよく悩まされるのが立退き問題です。長年居住している入居者が立退きを拒否し、居座るようなケースもあります。では、立退き交渉をスムーズに進めるにはどうしたら良いのでしょうか。そこで実際にココナラ法律相談のオンライン無料法律相談サービス「法律Q&A」によせられた質問をもとに、老朽化による立退き請求について竹中翔弁護士に解説していただきました。

30年暮らすアパートへ老朽化による立退き要求があり…


相談者のちょうこさん(仮名)は、30年以上住んでいるアパートのオーナーから、建物老朽化のため退去してほしいと言われています。

 

そこで、退去要請がきたら出ていかないといけないのか、また退去する場合の引っ越しや、新居を借りる費用を出してもらえるものなのかについて、ココナラ法律相談「法律Q&A」に相談しました。果たして、ちょうこさんは立退き要求に対して、どのような対応をとるのが適切なのでしょうか。

退去要請に応じなければならないのか

賃借人(相談者ちょうこさん)には、賃貸人との信頼関係を破壊する程度の賃料の不払い、用法違反、無断転貸などの事由が特段ないことや、また、契約関係が、定期建物賃貸借契約(借地借家法第38条)や取り壊し予定の建物の賃貸借契約(借地借家法第39条)ではない建物賃貸借契約であることを前提として、以下の解説をいたします。

 

借地借家法では、契約終了に関して規制がなされていますので、賃貸人から賃貸借契約を終了させるには正当事由が必要とされます。

 

では、正当事由とはどのようにして判断されるのかについてですが、賃貸人、賃借人双方の利害関係その他諸般の事情を考慮要因として、考慮要因の総合的考慮によって判断されます。そして一般的には、以下のような考慮要因が考えられます。

 

<中心的要因>

 

①賃貸人の事情(賃貸人が建物使用を必要とする事情)
②賃借人の事情(賃借人が建物使用を必要とする事情)

 

<補完的要因>

 

③建物の賃貸借に関する従前の経過
④建物の利用状況
⑤建物の現況
⑥立退料

 

今回のご相談の件でいうと、基本的要因は、①賃貸人の事情としては、建物老朽化による建替えの必要性などの事情が想定され、他方で、②賃借人の事情としては、現在のアパートに30年以上住んでいるとのことですので、賃借人の居住の必要性の事情が想定されますので、この両者の必要性について、まずは比較衡量がなされることになります。

 

なお、建物の老朽化という事情は、正当事由判定における考慮要因とはなりますが、建物が相当老朽化し、あるいは長期間経過していても、正当事由を否定する裁判例も複数ありますので、建物の老朽化のみで正当事由が無条件に肯定されるというケースは多くはないでしょう。

次ページ賃貸人、賃借人双方の視点から想定される対応

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録
会員向けセミナーの一覧