(写真はイメージです/PIXTA)

残業代の支払いは企業としての義務です。もし残業代が適切に払えておらず、従業員から請求されてしまった場合、企業側は様々な損失を被ることがあります。今回は、残業代請求されてしまった場合に起こり得る弊害や、企業が残業代を請求された裁判事例、残業代請求に備えた対策について、Authense法律事務所の西尾公伸弁護士が解説します。

 

従業員に残業代請求されないための正しい対策

従業員から未払い残業代を請求されるリスクは、年々高まっています。 未払い残業代の請求をされないよう、企業側であらかじめ対策をしておきましょう。

 

就業規則を整備する

就業規則は、労働条件についての基本ルールを定めたものであり、従業員を雇っている企業にとって雇用ルールの拠りどころとなるべきものです。もっとも、自社に合った内容かどうかをよく吟味しないまま、インターネットで見つけたテンプレートなどをもとに安易に就業規則を作成している企業が多いのが実情でしょう。

 

しかし、たとえば1年のうち夏場だけに残業が集中する企業などでは、就業規則を見直すことで、適法に残業代を抑えられる可能性があります。未払い残業代の発生を防ぎ、請求のリスクを減らすため、いま一度弁護士と共に就業規則を見直すことをおすすめします。

 

労働時間を正しく把握する

労働時間の適切な把握は、従業員を雇う企業としての義務です。適切に管理ができていなければ、従業員が日々記録した労働時間のメモなどを根拠に、ある日突然多額の未払い残業代を請求されてしまうリスクを常に抱え続けることとなりかねません。

 

このような事態を避けるため、タイムカードの導入やパソコンへのアクセスログの導入など、従業員の労働時間を正しく把握する仕組みを整備しておきましょう。

 

賃金支払いのルールを正しく知る

未払い残業代が生じてしまう理由のひとつに、企業側に賃金支払いについての知識が不足していることが挙げられます。

 

たとえば、残業代計算のもととなる労働時間は原則として1分単位で計算すべきとされており、15分未満の時間や30分未満の時間を切り捨てるなどというルールは認められません。

 

しかし、これを知らないまま常に30分未満を切り捨てて残業代の計算をしていると、これまで切り捨ててきた分に対応する残業代をまとめて請求されるリスクが生じてしまいます。

 

このように、企業側の知識不足から未払い残業代が生じているケースもありますので、現在の残業時間計算のルールに問題がないか、弁護士などの専門家に1度確認してもらうとよいでしょう。

残業代の時効について

残業代の時効は、2020年4月1日より施行されている改正法により、従来の2年から3年へと伸長されています。そのため、今後は最大3年分の残業代を請求される可能性がありますので、注意が必要です。

まとめ

未払い残業代がある場合、従業員側からいつ残業代請求をされてもおかしくありません。 近年ではインターネットで簡単に情報収集ができ、従業員が未払い残業代に気がつくケースが増えているためです。企業側としては、まず未払い残業代が生じない仕組みの構築を目指しましょう。

 

 

西尾 公伸

Authense法律事務所

弁護士

 

本記事はAuthense企業法務のブログ・コラムを転載したものです。

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