(※写真はイメージです/PIXTA)

世界地図をのぞくと日本はロシア・中国・北朝鮮に囲まれており、現在の世界情勢を照らし合わせると、地政学上大きく危険をはらんでいる国の一つといえます。2022年2月に始まったロシアのウクライナ侵攻による戦場の痛ましい現状の報道を目にして、罪のない人々が苦しむ姿に心痛めるとともに、自国の安全への不安を募らせれている人も多いのではないでしょうか。本連載では「2027年、日本がウクライナになる(他国に侵攻される)」と予測する、元自衛官で「戦場を知る政治家」である佐藤まさひさ氏の著書から一部一抜粋して、日本防衛の落とし穴についての知識を分かりやすく解説します。

ロシアが北方領土を手放すわけにいかない理由

なぜ、ロシアは北方領土が欲しいのでしょう? (中略)ロシアのカムチャツカ半島と北海道の間には、小さな島々が連なっています。北側にある島々が千島列島、南側にあるのが北方四島です。この島々をすべて自分のものにすれば、オホーツク海に蓋をすることができます。封鎖の状態をつくりたいのです。なぜか?

 

それはアメリカを意識してのことです。「オホーツクの蓋」は2つの意味をもっています。一つは、アメリカの進出を防ぐため。もう一つは、太平洋に出ていくためです。

 

択捉島や国後島を日本に渡せば、同盟国のアメリカが必ずやってきます。米軍の空母が北方四島の近くに陣取り、島の間を抜けて原子力潜水艦が入ってくる。ロシアにとって、それは国家存続の危機。絶対に避けたいことなのです。

 

現代の戦争は、戦略原子力潜水艦が大きなカギを握ります。例えば、地上から核ミサイルを発射した場合、高熱が出るため、発射地はすぐに特定できます。そうなれば即座に報復のミサイルが飛んでくる。ところが原子力潜水艦から発射すれば、発射後移動するのでどこにいるか特定できません。そんな潜水艦が国の近海にいたら、不気味でしかたがないのです。

 

しかもカムチャツカ半島のペトロパブロフスク=カムチャツキー港には、ロシアの潜水艦の基地もあり、最新鋭の原潜も控えています。オホーツク海を「戦略原潜の聖域化」とするためには米海軍を近づける訳にはいかないのです。

 

ロシアは、択捉島と国後島に軍事基地を構え「地対艦ミサイル」と「地対空ミサイル」を配備しています。海・空からの攻撃に備え、艦隊を撃つ用意をしている。そんな要所でもある北方四島を、あの強欲なプーチンが簡単に明け渡すはずがないのです。

冬でも凍てつくことのない北方四島の海

 

 

ロシアがオホーツク海に蓋をしたい理由。その2つ目は、大きな海に自由に出たいからです。もちろん目的は、軍事です。上の地図は、地球を真上から見たものです。あなたがロシアの指導者なら、アメリカをどう攻撃するでしょう?

 

「北極海越しにミサイルを撃ち込む」のが簡単そうですね。しかし、アメリカはそれを予測し防衛体制を固めています。途中で撃ち落とされる確率も高まります。そのため、北からだけではなくアメリカの西からも攻撃できる体制が必要です。それにはどうするか?

 

艦隊を率いてアメリカの近くに配備する。あるいは、潜水艦で隠れて近づく。長期間の潜航ができ、核兵器も積んだ原子力潜水艦を使って近づき威嚇いかくするのも有効でしょう。ワシントンDCや海軍基地のあるサンディエゴを狙えば、アメリカもたまらないはずです。いずれにしても、オホーツク海から太平洋に出ていくには「玄関口」が必要です。その玄関口に当たるのが北方四島なのです。

 

「オホーツク海の蓋」はとても長く、自由に出入りができそうなのですが、実は、千島列島の海は、冬には凍ってしまいます。つまり、自由に出入りできるのは北方四島の海だけなのです。こんな大事な島を、ロシアが返すはずがありません。

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    ※本連載は、佐藤まさひさ氏の著書『知らないと後悔する 日本が侵攻される日』(幻冬舎)から一部を抜粋し、再編集したものです。

    知らないと後悔する 日本が侵攻される日

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    佐藤正久(現・佐藤まさひさ)

    幻冬舎

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