相次ぐミサイル発射。北朝鮮の本当の狙いは?
2022年に入り、北朝鮮がミサイルを発射する回数が激増しています。確認されているだけでも6月上旬までに17回26発。過去3年と比べても、突出して多いことがわかります(2019年は13回、2020年は4回、2021年は4回)。しかもロシア軍のウクライナ侵攻後には4ヵ月で11回。不安になった人も多いでしょう。その意図は?
一番はミサイルの精度を高めることです。2021年、金正恩総書記は「国防5か年計画」を発表し、軍事力の強化を打ち出しました。ミサイルは実際に発射実験をして、トライ&エラーをくり返すことで、命中精度を高めていきます。
しかし今、発射実験の回数が増えている背景には、技術の向上以上に「政治的な思惑がある」と、私は見ています。その一つは「ロシアとの連携を示す」です。もう70年以上も前になりますが、朝鮮戦争の際に後ろ盾になってくれたのはソ連でした。言わば「建国の恩人」なのです。言葉は悪いのですが「やくざの親分と子分」のような関係で、「親分が戦うなら俺も」と"忠誠"を示したのです。
北朝鮮のミサイルにはロシアの技術が取り入れられています。このため、日本やアメリカは、北朝鮮のミサイル発射に対し、ロシアに制裁を加えるのです。「世界の目がウクライナに向いている隙に撃ってしまおう」という考えもあったかもしれません。しかし北朝鮮の本当の狙いは、アメリカの関心を引くことです。なぜか?
アメリカを交渉の場に引きずり出そうとしているのです。北朝鮮は、アメリカから多数の制裁を加えられています。緩和してもらいたいのに交渉はストップしたままという状態です。交渉の場を設けなければ、制裁は解かれない。そこでミサイルを発射して暴れまわり、アメリカを挑発している訳です。デタラメとしか言いようがない、幼稚さです。
しかし金正恩総書記としては、国民の手前、頭を下げて「交渉再開」をお願いすることはできない。威張りながらアメリカを交渉の席に着かせるには、これしか方法がないのです。「泣く子と地頭には勝てぬ」作戦でしょうか?