恐るべき台湾有事。なぜ中国は台湾を獲りにいくのか?
「逆さ地図」を見てみましょう。今度は日本列島の西側まで視野を転じてみます。奄美諸島、琉球諸島、尖閣諸島などの島々(南西諸島)が点在し、その西側の大きな島が台湾です。
改めて地図を見ると、日本列島がユーラシア大陸を覆う蓋であることは一目瞭然でしょう。日本列島の左翼は北方四島。右翼は南西諸島。ロシアが北方四島を欲しかったように、中国は、南西諸島の島々が欲しくてたまりません。
台湾も含めての「東シナ海の蓋」は、軍事的にも経済的にも、非常に大きな意味をもつからです。中国が、尖閣諸島や台湾を強引な論理で「自国のもの」と主張するのはこのためです。何が、どう重要なのか?
まずは、中国から見た台湾の重要性を話します。台湾は、三つの海を結ぶ位置にあります。「太平洋」「東シナ海」「南シナ海」です。フィリピンとの間には「バシー海峡」があり、中国との間には「台湾海峡」がある。このように、海をもつことは"戦略上"とても有利なのです。なぜなら海は「モノを運ぶ」には、最も効率のよいルートだからです。
例えば、戦車を運ぶ場合、輸送機ではせいぜい数台です。でも大きい船なら数百台程度は運べます。石油などの燃料も運べるし、空母なら"滑走路付き"で戦闘機を運べる。つまり海をもてば物流を支配できる。狭い海峡ならなおさらです。船を"生かすも殺すも""通すも通さぬも"いかようにもできる訳です。
さらに、中国の海南島には中国海軍の主要基地(楡林基地)もあります。ここから潜水艦や艦船が太平洋に出るには、バシー海峡を通るのが最も安全なルートなのです。
台湾有事になれば、日本には石油が入ってこない!
中国にとって”複数の海域の交差点”とも言える台湾は「海上の要衝」だと理解できたでしょう。ここを自分のものにすれば、他の国に対して優位に立てます。
例えば、日本も韓国も、簡単に痛めつけることができる。もっと言うと、なぶり殺しにできるのです。どういうことか? 地図を見てみましょう。
日本は石油の9割以上を中東から輸入しています。中東で石油を積んだ船は、インド洋を通り、マレーシアやシンガポール、インドネシアの間のマラッカ海峡を抜けて、南シナ海に出ます。その先にあるのが台湾です。
フィリピンとの間のバシー海峡を抜け、沖縄などの南西諸島の東側を通って日本に到着します。台湾有事、つまり中国が台湾に侵略戦争をしかけたら、どうなりますか?
戦争でドンパチやっている場所など、誰も通りたくないでしょう。しかも石油を積んでいるタンカーには、日本人は乗っていません。船籍や運営会社は日本でも、乗組員は全員が外国人です。命の危険を冒してまで、日本人のために石油を運んでくれる外国人がいると思いますか? 私には、到底いるとは思えません。