〈予算=ノルマ〉の考えは危険…会社の存続を左右する「数字の捉え方」【公認会計士が解説】

〈予算=ノルマ〉の考えは危険…会社の存続を左右する「数字の捉え方」【公認会計士が解説】

日常に把握すべき営業利益をターゲットにして、その数値をタイムリーに集計する「秒速決算」。経営者を筆頭に各社員が「秒速決算」の意識を持ち、一丸となって予算を達成することが「会社存続の原動力」につながると、KMS経営会計事務所の代表である公認会計士・税理士の川崎晴一郎氏はいいます。一般的に「ノルマ」と捉えられてしまいがちな予算について、それぞれがどう捉え、向き合うべきなのでしょうか、みていきます。

予算は会社存続のために達成しなければならない計画値

「予算は重要だ」とか「予算は達成しなければならない」といわれますが、なぜそういい切れるのでしょう。社員からすれば会社が勝手に決めた数値であって、ノルマのようなネガティブなイメージがありそうな「予算」ですが、まずは予算の重要性について見ていきたいと思います。

 

一般的に、「会社にとっての予算」とは、当期に作成する来期の数値計画や、前期に作成した当期の数値計画のことを指します。「計画」という単語も、予算と同じ意味合いで使用されることが多く、私自身も実務では同じような意味合いで使ったりします。

 

しかし、どちらかというと、予算のほうが「単年度」の「数値」に限った範囲と狭義であり、中期や長期といった期間には、予算ではなく計画という表現を用います。また、数値のみならず行動や状態などを含む定性的なものにも計画という表現を用いるでしょう。

 

そこで本書では、予算は「単年度の数値」に限った会社の計画の一部であると定義づけることにします。ちなみに単語のニュアンスから、予算が重要というのはピンとこない場合でも、計画が重要というのはピンときたりしないでしょうか。

 

予算は計画の一部である以上、その重要性は計画の重要性と紐づくと考えてよいでしょう。

計画の重要性を改めて考える

計画とは一般的に、「目標(注1)を達成するための現在の決定」のことをいいます。目標があるから計画を立てるわけであり、目標自体が重要でなければ計画も重要でなく、目標自体が重要であれば計画も重要なもの、ということになります。

 

当たり前ですが会社の目標が重要でないはずがありません。何のために目標を立てるかといえば、突き詰めれば「会社の存続のため」です。

 

たとえば、ナンバーワンやオンリーワンを目指すのは、社長が目立ちたいからではなく、社会にとって意義があり、競合他社に負けない規模感や質感を備えるため、つまりは「競合に勝ち抜き、生き残るため」です。

 

ドラッカー教授(注2)の著書の一節に、「企業にとっての第一の責任は、存続することである」とあるように、経営者はその責務をきちんと理解した上で目標を設定しているのです。

 

目標は経営者が「会社の存続のため」に意図して設定したものである以上、計画は必ず達成しなければならない重要なものであると理解するべきです。予算も計画の一部なわけですから、当然達成しなければならない重要なものということです。

 

社員が一丸となって今年の予算を達成することが、会社が将来もずっと続くための原動力になるのです。ですから予算は重要であり、達成しなければならないのです。

 

(注1)目標:目標と計画はしばしば混同して使われることがありますが、目標のほうが先に設定されるものであり、計画はその目標を達するための現在からのステップとして設定されます。目標は抽象的な内容で表現されたりもしますが、計画は具体的な数値や行動で示すことになります。たとえば、5年後に業界No1、3年後に黒字化といった目標がまず設定され、計画はそれに向けた現在から未来への具体的な数値や行動を設定したもの、という関係になります。

 

(注2)ドラッカー教授:ピーター・ファーディナンド・ドラッカー氏(1909年11月19日~2005年11月11日)は、「現代経営学」あるいは「マネジメント」の父と言われる偉大な経営学者です。本文中の引用文はドラッカー教授の著書『現代の経営』からの抜粋です。

 

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※本連載は川崎晴一郎氏の著書『秒速決算 ~スピーディに人を動かす管理会計で最高の利益体質をつくる!~』(技術評論社)より一部を抜粋・再編集したものです。

秒速決算

秒速決算

川崎 晴一郎

技術評論社

内容紹介(出版社より) 「月次決算待ちだった経営者が、末端部門の数値までもタイムリーに把握できるようになる」 「儲かる仕事を見定め、社内リソースを適時配分することがスムーズになる」 「経営陣と経理のものだった数…

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