経営者が会社をより儲かる活動へとスピーディにシフトチェンジするための方法として、売上や販管費などの数値を「経理担当」ではなく、各事業部の「現場社員」が集計すべきだと、公認会計士・税理士の川崎晴一郎氏はいいます。一見、ひとつの部署でまとめて集計したほうが効率的に感じますが、各事業部の現場社員が集計することで会社にどのようなメリットがあるのでしょうか、みていきます。

「秒速決算」とは

「秒速決算」とは、秒速で決算を行うという概念自体と、そのために会社に作る仕組みや体制を総称しています。「秒速決算を取り入れる」ということは、秒速で決算が行えるような体制を社内に作ることだとご理解ください。

 

最初に結論から述べますが、月次決算や年次決算で登場するような、貸借対照表や損益計算書の作成を締日(月次決算なら月末、年次決算なら年度末)後に秒速で完了できるようにはなりません。

 

もしかしたら多大な努力と工夫によりできるようになるかもしれませんが、おそらく費用対効果が合わず無意味ですので、そこは目指しません。できるだけ手間をかけずに、経営管理の目的を果たす数値のみを決算対象の項目として集計します。

 

「え、そんなの決算でも何でもないじゃん」そんな声が聞こえてきそうですが、貸借対照表と損益計算書を決算による成果物として提出しなければならないのは、年度末などの限られたタイミングのみであり、そもそも、それ以外のタイミングで何をもって決算内容として社内で共有するかは各社自由なのです。

 

重要なのはタイムリー(日常的)に業績数値(活動成果)がどうなっているのかを把握し、会社をより儲かる活動へとスピーディにシフトチェンジさせることです。それを目的として、決算の項目が貸借対照表と損益計算書のセットでなければならない、などという固定観念はいったん取っ払って楽になりましょう。

 

経営管理目的で経営者と社員がタイムリーにフォーカスすべき数値は営業利益です。つまり、年次以外の日常の決算の重要な目的は、いってしまえば営業利益(厳密にはその元となっている売上高・売上原価・販管費の各項目)の把握にほかなりません。

締日時点で数値集計が完了している状態を目指す

「秒速決算」は読んで字のごとく秒速で決算を締めるようなイメージであり、日常に把握すべき営業利益をターゲットにして、その数値をタイムリーに集計することを意味します。「遅くとも」締日の翌営業日程度に、締日までの営業利益の概要を把握できる体制を目指します。

 

なお、締日は数値管理の実務を勘案し、毎月の末日とします。ただし、締日後に数値集計作業を開始したのでは「秒速決算」は実現しない上、毎月末日後のタイミングでしか数値を把握できない状態ではタイムリーとはいえませんので、「秒速決算」では、締日を待たずに数値集計を見込みベースで更新していきます(図表1)。

 

[図表1]「秒速決算」のための数値集計イメージ 

 

・営業利益までの各数値はタイムリーに更新され、月末時までにフィックスする

・経営者・管理者は本日時点で予測される当月着地の見込額を把握できる

 

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※本連載は川崎晴一郎氏の著書『秒速決算 ~スピーディに人を動かす管理会計で最高の利益体質をつくる!~』(技術評論社)より一部を抜粋・再編集したものです。

秒速決算

秒速決算

川崎 晴一郎

技術評論社

内容紹介(出版社より) 「月次決算待ちだった経営者が、末端部門の数値までもタイムリーに把握できるようになる」 「儲かる仕事を見定め、社内リソースを適時配分することがスムーズになる」 「経営陣と経理のものだった数…

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