儲かっていない中小企業は「粗利率」が低い
失礼を承知で言うと、儲かっていない中小企業の損益計算書を見ると、これでは儲からないですよね、と一目でわかることが多いです。
注目すべきは粗利率(売上総利益÷売上高)です。とにかくこれが低い。
売上高が大きければまだよいのですが、中小企業なので売上高も大きくありません。売上高が小さく粗利率が低い場合、人件費や広告費といった販管費を賄うための粗利(売上総利益)を稼げないため、営業利益を確保できません。
粗利率が低いのは多くの場合、値段設定が低いからです。いわゆるP戦略のミスです。競合他社に勝つためと、値段をあえて低く設定して勝負しようとしている場合はまさにこの状態です。
また、競合ひしめく業界に新規参入した場合も、競合による値下げ合戦の結果として粗利率が低い状況からのスタートとなってしまいます。粗利率が低い商品・サービス自体を選択している時点で、その中小企業の負け戦がほとんど確定します。
なぜなら、たくさん売れないと赤字になりますし、たくさん売るための仕組みを、儲かっていない段階の中小企業が用意するのは茨の道になるからです。たくさん売るためには人手が必要ですし、その人たちへの教育もしなければなりません。
集客のためのマーケティング活動も必須です。設備投資をし、在庫も確保しなければなりません。利益がまだないしょっぱなの段階から、すでに多くの手間とコストがかかります。
これにさらなる苦労が重なります。
社員が増えれば社員間のトラブルが増えます。売上が増えるまで儲からない期間が続きますので社員の給料を増やせず、忙しい思いばかりをさせた結果、せっかく教育した社員が辞めてしまうこともあります。
その上お客様の数が増えるわけですから、お客様のクレーム数が増えます。そして、そんな苦労をした割に、結局思っていたほどたくさん売れなかったりします。
よくあるパターンなので身近な会社に思い当たる節はありませんでしょうか。ただでさえ経営資源が少ない中小企業において、たくさん売らなければ儲けられない構造にしてしまっていることは非常にリスキーなのです。
たくさん売れなくても地獄、たくさん売るための茨の道も地獄であり、儲かる見込みが著しく低くなってしまいます。
もともとたくさん売れる「確証的」な見込みがあったり、建設業や不動産業のように販売単価がとても高ければ、粗利「額」を確保できるのでよいのですが、そうでない限り粗利率は少なくとも50%は確保したいところです。
粗利率が低く、そして売上も少ない「ジリ貧」の会社は、まず粗利率の改善を考えましょう。